「今年で終わるつもりはないですから」2軍で投げ続けた金子千尋…背中で伝えた“最後の1年”

現役引退した金子千尋【写真:荒川祐史】
現役引退した金子千尋【写真:荒川祐史】

コロナで3週間試合なし…減り続けるアピールの場「これくらいでは忘れない」

 1軍では5月22日の西武戦(札幌ドーム)で投げたのが最後。2軍での結果は頭抜けているのに、1軍から呼ばれない。そもそも新庄剛志監督は、2022年を1年間をかけたトライアウトだといってやまなかった。38歳の金子は、それだけで居場所が狭くなる。「1軍で結果を残さないと意味がない。そのためにやっているので」。まずは2軍で結果を残さなければ道は開けない。だから“仕事”はとにかくていねいだった。話を聞いた日も、先頭弾を浴びてからパッと切り替えてみせた。

「もちろん、全部抑えたいですよ。でも現実はそうはいかない。ピッチングはうまくいかない時にどうするか。絶対ランナーは出るものだと思っているので。打ち損じさせることはできたのかな」

 日本ハムの2軍は昨季、1軍以上の困難に襲われた。夏場にチーム内で新型コロナウイルスの感染が広がったことで、選手が足りず、試合を中止にするほかなかった。7月20日の試合を最後に、8月14日まで約3週間に渡って、練習だけの日々。金子にとっては、アピールの場がひとつ、またひとつと失われることに等しかった。それでも、やることは変わらなかった。

「試合がないから、トレーニングが適当ということにはならないじゃないですか。いつでも試合に入れるように、1軍に呼ばれる可能性もゼロじゃないですし。『試合間隔が開いていたからダメでした』じゃ言い訳にならない」と、徹底的なプロフェッショナリズムを見せた。試合勘はどうだったのかという質問にも「正直、これくらいで感覚は忘れないですよ。怪我明けでもないですし。勝手にローテーションを決めてというわけじゃないですけど、普段通りにランニングして備えて」。心配ご無用と言わんばかりだった。

 そう話す金子の肩には、降板直後にも関わらず氷の入ったアイシング用のパックがなかった。代わりに持っていたのは、電極のついた機械とそのコントローラー。筋肉がピクピク動いているのは分かった。「アイシングは炎症を抑えることができますけど、これは筋肉をパンプアップさせて血流を促すんです」と、米国で手に入れたという機器を見せてくれた。投げ続けるため、うまくなるためにはとことん貪欲だった。

「自分のことをしっかりやっている。それを若いヤツはどう見ているか…」

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