指導とは違う打ち方を選択…選手はどう説明? 元プロ監督が大学で伝える“人間関係”

現在は広島大学スポーツセンターの客員教授を務める【写真:本人提供】
現在は広島大学スポーツセンターの客員教授を務める【写真:本人提供】

少年野球の指導者や保護者には「まずは子どもに負担をかけない」

 授業の一例も挙げた。「誰かがYouTubeでこういう打ち方をするといい、ボールを上げるにはこういう打ち方をした方がいいと言って、ある高校生がそれを見て、これやってみたいとなった。でも実際に教えてもらっている監督やコーチもいて、その人がこうやって打つんだよってずっと指導してくれていたとする。その高校生がいきなりYouTubeで言われた打ち方をして、それまでの打ち方を辞めた時にコーチの人たちとの関係はどうなりますか、と。それを考えてもらったりね」。

 教える側と教えられる側の人間関係の問題だが、話は実に奥深い。「コーチと選手のあり方とか、どっちがえらいとかじゃなくてね。会社で言えば、上司のやっていることも理解できながら意見が言える部下ができていくとよりうまくいくんじゃないかってね」と目を輝かせながら話した。教員の資格が取れたわけではないが、これも夢の一環とは言えるのだろう。

 2005年の引退セレモニーでのスピーチで野村氏は「今日集まった子どもたち、野球はいいもんだぞ! 野球は楽しいぞ!」と声を張り上げた。あれから17年。元広島選手であり、元広島監督であり、広島大学スポーツセンター客員教授でもある野村氏は少年野球の指導者や保護者にこう熱く訴えた。

「あんまり頑張らせすぎない、食えとかプロテイン飲めとか、どこどこに行けないよって圧をかけない。子どもが楽しいでいいじゃない。明日試合だから、お父さん送ってね、お母さん弁当頼むねってうれしそうに話をするだけでもいいじゃない。楽しくしていることがいい。好きだったら自分でやるし、上手になる子はほっといても上手になるんだから、まずは子どもに負担をかけない。目標はあっていい。でもそれを間違えると大変なことになると思うよ」

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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