教頭から呼び出し「不祥事やらかしたかな」 予期せぬ指名だった“他人事”のドラフト
日大進学予定が中日に5位指名…思い浮かんだ父親の顔
いわゆるファン感覚で、有力選手の行く先が気になっただけ。それだけに校長室で中日から5位指名を受けたと聞いた時は驚いたし、うれしかった。「今のようにプロ志望届とかない時代だし、自分は日大に進学するつもりだったし……。4時間目か5時間目か覚えてないですけど、教頭先生が教室に入ってきて『山本君、ちょっと』って言われても、えっ、何か不祥事でもやらかしたかなと思ったくらいでしたから」という。
「正直、可能性があるかなと思っていたのは大洋かと。神奈川だしね。それが中日だったんでね」。すぐに思い浮かんだのは父親の顔だった。「親父が中日ファンだったんです。それこそナイターを見ながらマーチンだ、高木だ、星野だ、って言ってましたから。親父、うれしいだろうなってまず思いましたね」。
担当スカウトにも恵まれた。元中日捕手の高木時夫氏。後に阪神スカウトや、阪神・星野仙一監督を支える球団広報も務めながらも、ずっと山本氏を見守ってくれた人だ。「時さん(高木氏)に『(プロでも)できるよ』って言われてね。プロではよくしかられましたよ。『もっとしっかりせんといかんぞ』っていつもハッパばかりかけられましたけどね。でも、やっぱりあの方がスカウトでよかったと思います」。
高木氏は、当時日大藤沢を率いていた香椎瑞穂監督の日大監督時代の教え子でもあった。そんな縁も山本氏を味方した。父親の中日指名を喜ぶ顔も決め手になってプロ入りを決断したが、そもそも、ドラフト指名に至るきっかけにもいろんな要素が……。実は、“Y校”のエースも関係していた。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)