恩人は消息不明「探してもらったけど…」 米で習得…内野手が教えてくれた最強の武器

メキシコ人野手から握りを学び「いけるかもと思った」

 メキシコ人のスパニュオーロはキャッチボールで投げていた。「握りを聞いてやってみたら、あれっ、いけるかもと思った」。バレンズエラとは違う握りだったが、試合でもすぐに使えるようになった。「普段、ボールを握っていたから、指につくようになったのかな。手で回したり、挟んだり、いろいろやっていたのが良かったのかな。不思議だったね」。

 恩人のスパニュオーロはその後に解雇され、チームを去った。もしも、教えてもらう前にそうなっていたら「僕のスクリューはなかったかもしれない」と山本氏は言う。この恩人の消息は不明という。「以前に、テレビ番組に頼んで探してもらったんだけど、メキシコで郵便局員をやったところまでは調べられたんだけど、その先がわからないまま。年は僕と一緒か1つ下。僕が日本で50まで投げたなんて絶対知らないよね」。忘れられない人物の一人だ。

 スクリューを身につけた山本氏は1Aベロビーチの先発ローテーション投手に成長した。1Aのオールスターゲームにも出場した。アメリカ生活にも慣れた。体重は12キロも増えた。「ホットドッグとコーラで太った。球場にある販売機は全部炭酸だし、どこに行っても水を探すほうが大変だった。くそ暑くて飲む量も多くなる。ラージサイズに何杯も。そりゃあ太るよね」。白星も積み重ね、13勝でリーグトップを走っていた。そんな時だった。

「マイアミ遠征中に、アイクさんがいきなり部屋に来て『ヤマ! 日本に帰るぞ。星野が帰って来いって言っているぞ』って言われたんです」。山本氏は即答したという。「嫌です」と。これには深い理由もあった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY