激戦区・神奈川から北海道へ 紋別高・加賀谷実監督が進める「ルパン型」のチーム作り

紋別高校の練習風景【写真:大利実】
紋別高校の練習風景【写真:大利実】

部員に「加賀谷監督」ではなく「加賀谷さん」と呼ばせるワケ

 なぜ、高校の指導者が中学校の教師を訪ねたのか。猿橋氏は中学生の心と技を丁寧な指導で育て、全国大会に4度導いた実績を持っていた。カテゴリーは違うが、高校生の指導にも生かせることがあるはず。初対面の猿橋氏に対して、さまざまな質問をぶつけ、指導のヒントを得ようとした。

「猿橋先生から学んだのは、組織を作るマネジメントのうまさです。心に響いたのは、『今の時代は、トップダウンの“ピラミッド型”ではなく、ひとりひとりの関係性がフラットで、個性を生かした“ルパン型”が求められる』という考え方。たしかに、そうだなと。『ルパン三世』は、登場人物の個が際立っている。『ワンピース』にも言えますよね。監督やキャプテンが組織の上にいるようなチームを作ると、指示は通りやすいけど、指示待ち人間が育ちやすい。紋別高校は部員数が少なく、チーム内競争は生まれにくい分、ひとりひとりに目をかけてあげられる時間があります。目指すのは、ルパン型。部員が少ないからこそ、そこで勝負していきたいですね」

 ルパン型の組織を作るために、指導者が心がけることは何か。

「監督が、選手がいる場所まで下りることだと思います。ピラミッドの頂点に君臨していては、選手も言いたいことが言えないでしょうし、主体的に活動できない。だから、『加賀谷監督』ではなく、『加賀谷さん』でいいんです。“地域のおじさん”みたいな立場がちょうどいい」

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