不振のイチローをモノマネ、安打にお祭り騒ぎ “極限状態”から蘇った侍の「結束力」

侍ジャパンのチーフスコアラーを務めた三井康浩氏【写真:中戸川知世】
侍ジャパンのチーフスコアラーを務めた三井康浩氏【写真:中戸川知世】

亀井らが不調のイチローと同じ“オールドスタイル”に変えた

 原監督の言葉以外にも、チームの絆が深まる“アクション”があった。亀井義行外野手、片岡易之内野手(登録名は当時)、内川聖一外野手、らがストッキングを膝下まで上げた。イチローと同じ“オールドスタイル”。これは打撃不振にあえぐイチローを元気づけるためのものだった。「イチローは個人の練習を1日も欠かさなかった。そういうのをみんな見て、やっぱり心を動かされたというか、何かイチローのために、というのがあったと思いましたね」と三井氏も言う。

 この試合の5回無死一塁、イチローはノーサインでバントを試みたが、サードフライに倒れた。これで12打席ノーヒット。屈辱的なシーンだったはずだ。「本人は悔しかったと思いますよ。ただ、ベンチのみんなは全然そんなことを感じさせないようにしていましたね。みんながそれを打ち消していました。失敗してネガティブになるより、ポジティブに失敗したら次いこうというようなね。あの時の代表選手の気持ちの強さも表れていましたね」。

 そして次の打席。7回無死一塁でイチローはライト前ヒットを放った。13打席ぶりの「H」ランプ。「あの時のベンチはもうお祭り騒ぎでしたね。やっぱりポジティブなところは全員でという感じで」と三井氏は思い出しながら笑みを浮かべた。イチローは9回の5打席目には中越え三塁打。試合も侍ジャパンが5-0でキューバに勝ち、準決勝進出を決めた。崖っぷちで、チームがさらに一丸となった日。それが、その後にもつながったわけだ。

 振り返れば、第2ラウンドはこのキューバに2勝したのが大きかった。三井氏にとっては1戦目のキューバ戦(3月15日、ペトコパーク)も忘れられない試合だったという。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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