最優先は地元で母に親孝行 高卒指名の可能性も…スカウトが手を引いた魅力的な就職先

元広島・佐々岡真司氏(左)と母・江美子さん【写真:本人提供】
元広島・佐々岡真司氏(左)と母・江美子さん【写真:本人提供】

NTT中国で野球を続行…カープも手を引いた

 夏の大会が終わってからは下宿する必要もなくなり、自宅から浜田商に通った。そんな状態から、もう一度、野球の道に戻ったのはプロのスカウトたちに説得されたからだった。「2学期が始まったら、スカウトの人たちが挨拶に来た。その時にも野球をやめます、という話をしたら『なんでやめるんだ』『やめるのはもったいない』とずっと言われたんです」。ほとんどの球団のスカウトが来たという。それで考え直し始めた。

「ドラフト5位とか6位とかで将来性を考えて獲るってことでした。もともとプロに行きたかったわけですから、正直プロもいいかなって、思いましたね」。大好きなカープに行ける可能性もゼロではなかったので揺れた。だけど、やはり自信もなかった。

 そんな時だった。「社会人からもいくつか話はあったんですが、NTTの監督とマネジャーが家まで来て、誘ってくれたんです」。広島市のNTT中国。「母も、広島なら、社会人ならと渋々OKしてくれたと思う。それでプロは断った」。

 広島の備前喜夫スカウトもNTT中国なら、と手を引いた。当時、カープの2軍がNTTのグラウンドを借りていた。「『NTTにはお世話になっているから、ケンカはできない。そっちに行って3年後に獲れる選手になってくれ』と言われた」。その部分の踏ん切りもついたわけだ。だが、社会人生活も甘くはなかった。自信を喪失しそうな時もあった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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