“片目見えず”も大一番で好投 「手が震えて…」登板直前にまさかのアクシデント

右目にコンタクトレンズを入れぬまま登板…8回途中無失点の好投を見せた

 佐々岡氏は10月9日の中日戦で完封勝利をマーク。13日は中3日でのマウンドになり、首脳陣にしてみれば19日開幕の日本シリーズを考えて、できるだけ投げさせたくなかったようだが、1試合目に敗れ、出番となった。「マッサージしながら待っていたけど、長かった。1試合目は延長に入って負けましたからね。終わって2試合目が始まるまでに15分か20分しかないと言われて、コンタクトを入れようと思ったら手が震えて……」

 左目には何とか入ったが、右目にはどうしても入れられなかった。時間が迫ってきて、気持ちも焦る。それでも入らない。どうしよう、どうしようと思っているうちにとうとう時間がなくなった。結局「右目はコンタクトが入っていないまま、マウンドに上がった」のだ。その状況を達川捕手にも伝え、サインが見えなくなった時には出し方も工夫してもらったという。

「試合中にコンタクトを入れるには、手を洗わなければいけないじゃないですか。ロジンもつけているし、洗って(手を)冷たくしたりするのも嫌だったから、ずっとそのままの状態で投げました」。まさかの“コンタクト事件”だったが、佐々岡氏はそれも乗り越えて好投した。1-0のしびれる試合展開で、8回途中まで6安打無失点。その後も大野豊投手がピシャリと締めて、歓喜のVを成し遂げた。

「8回ノーアウト一塁になって(監督の山本)浩二さんがマウンドに来た。その回まで投げ切って9回を大野さんにって思っていたし、浩二さんもそのつもりで(ベンチに)帰ろうとしたら、達川さんが『代えましょう、もう無理です』と言って大野さんに交代になりました」と懐かしそうに話したが、舞台裏は大変だった。コンタクトの一件は、忘れられない思い出でもあるわけだ。そして西武との日本シリーズ。佐々岡氏は第1戦、第4戦、第7戦に先発した。

【写真】現役時代はコンタクト…1996年のオールスターで優秀選手となった佐々岡氏

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