遠距離で奮闘中の“相棒”とビデオ通話で成長
手のひらサイズの液晶に浮かぶ「見慣れた顔」が日々の楽しみになっている。オリックス・紅林弘太郎内野手が、意味ありげに笑う。「俺、お土産も欲しいけどさ……。そんなことより、情報、共有していこうぜ!」。食欲旺盛な高卒4年目の、欲張りな冗談が、自身をまた成長させている。21歳になっても、“遠距離”になっても……同期入団の宮城大弥投手との“会話”が心の支えだ。
紅林の“相棒”である宮城は「侍ジャパン」の一員として、第5回ワールド・ベースボール・クラシックに参戦中。2月中旬からチームを離れた仲間とは「LINE? してますよ。てか、ビデオ通話っすかね。そっちの方が早いんで」と日々“顔合わせ”をしている。
2人は、2019年ドラフト1、2位の同期入団。「ずっと一緒にいましたからね。投手と野手で(練習などの)時間が違ってもどっちかが合わせてましたね」。球団寮に住んでいた頃は部屋も隣で「壁ドンドンして遊んでました」と健気に笑う。互いに今オフ退寮。「連絡は取ってますよね」とニタニタの表情で話を進めると「まぁ……、言ってみれば毎日ですかね」顔を赤らめる。
2人が“一時解散”した、侍ジャパン合宿の初日。早速、宮城から「やっぱり、エグいよ……」と連絡が入った。紅林は「なんだよ、と。僕はLINEしないでおこうと思ってたのに(笑)。でも、そのLINEが衝撃的で……」。一瞬、既読無視も脳裏をよぎったが「どんな感じなの?」と、すぐに返事した。数分後、返信を楽しみに細めていた目が、一気に開いた。
衝撃だった18.44メートルの使い方「空気圧と風向き、空気抵抗」
「ダルビッシュさんは変化球を投げるとき、変化量、曲がり方、どこで曲げるかを空気圧と風向き、空気抵抗で考えているんだって……」
考えたこともなかった18.44メートルの使い方に「あのレベルに行くと、そこまで空間を考えているんだなと。僕は今日、風強いな、ぐらいでしか捉えていなかった。僕にはわからないレベルの話。勉強になるというか、もう次元が違いました……」と紅林は頭をかいた。
詳細が聞きたくて“追いLINE”も連発。日頃のわちゃわちゃムードとは違い、丁寧に返信が戻ってくる。「村上さんは開脚ズバッとできるよ」「みんな練習前から体が出来上がってるよ」。“相棒”から真剣なテキストが送られてくる紅林は、感謝しかなかった。「基本、投手陣の話なんですけど、ダルビッシュさんたちの野球に対しての考えとか聞いて。取り組む姿勢とか。聞いたことないレベルの内容で、テンパってます」。頭脳をフル回転させ、さらに大人になっていく。
そんな紅林が夢中になっているのは「スリム化」だった。「体重はベストな数値がまだわからないんで、そこまで気にしてないんですけど、今は体脂肪率ですね」。運動量を上げて、筋肉を強化する。なぜ、体脂肪率なのか。「寮を出たとき、体脂肪率16%を切ってないと、もう1回、寮に戻すからな、と」。そんな「約束」が紅林のスリム化を導いている。「監督やコーチとの約束なので、こっちはクリアに必死ですよ……」。
侍ジャパンはWBCの準決勝、決勝に挑むため、米国・マイアミに戦いの場を移した。宮城が持ち帰るのは、甘いお菓子か、土産話か……。“ミヤクレコンビ”に選択肢は1つしかない。
○著者プロフィール
真柴健(ましば・けん)1994年、大阪府・池田市生まれ。京都産業大学卒業後の2017年、日刊スポーツ新聞社に入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間、爆速で「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年2月からFull-Count編集部へ。
(真柴健 / Ken Mashiba)