大阪桐蔭に「1球」で負けた初出場校… 昨春王者を追い詰めた“挑戦者”の正体

大阪桐蔭戦に先発した能代松陽・森岡大智【写真:共同通信社】
大阪桐蔭戦に先発した能代松陽・森岡大智【写真:共同通信社】

初出場の能代松陽は“1球”に泣いた

 初出場校が“捨て身の覚悟”で、前大会王者を追い詰めた。「第95回記念選抜高校野球大会」が阪神甲子園球場で行われ、大会9日目第1試合では選抜初出場の能代松陽(秋田)が0-1で大阪桐蔭(大阪)との接戦に競り負けた。合言葉は「この試合に負けたら引退」。先発した森岡大智投手(3年)は「今日が夏だと思って戦ったので……」と悔しさを滲ませた。

 勝敗を決めたのは“1球”だった。0-0の7回無死、大阪桐蔭の4番・南川幸輝捕手(3年)に三塁打でチャンスメークを許した。その後、1死三塁の場面で、4球目のストレートを投じた瞬間だった。カウントを追い込んでいたが、6番・村木勇海内野手(3年)にスクイズを転がされた。2ストライクに追い込んでいた森岡の予想は「打ってくる」。インコースへ投じる瞬間に、バントの構えが目に入った。「もっと対策できたと思います。高めに外せばよかった……」。善戦を続けていたが、たった1球で試合が決まった。

 能代松陽は選抜初出場をかなえた公立校だった。前大会王者の大阪桐蔭と拮抗した投手戦を展開した。7回1死三塁、“あの1球”を投じる直前にはバッテリーでマウンドに集まった。柴田大翔捕手(3年)と下した決断は「1点はいいから。絶対に味方が取り返してくれる」。プレッシャーに押しつぶされないための声かけだった。だが、結果は1点で負けた。エースは試合後「今思えばかなり後悔している」と肩を落とした。

 昨秋の東北大会準決勝でも、仙台育英(宮城)に1-2の1点差で敗退。この試合も1点に泣いた。ただ、昨年の春夏覇者と僅差の勝負ができたことは教訓になるはずだ。「1点差で負けてしまったってことは、自分が抑えれば必ず勝てることを表している。夏は全ての試合を完封して日本一になれるように頑張りたいです」。次こそ、負けたら本当に引退。スコアボードを見つめ、新しいスタートを切った。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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