WBC優勝に込められた栗山監督のメッセージ 五十嵐亮太氏が分析する2つの軸

WBCでも二刀流の活躍で無双した大谷「夢が詰まっている」

 他方、大谷が担った役割は「夢や希望を伝えること」だ。2018年にエンゼルスへ移籍した当初は二刀流の活躍に懐疑的な声が大半だったが、それをアッという間に覆し、2021年にはア・リーグMVPを獲得。投げては球速160キロ超の剛速球でバットに空を斬らせ、打っては飛距離140メートルを超える特大アーチを空に架ける。WBCでも二刀流は健在で、投手として2勝1セーブ、防御率1.86、打者として打率.435、1本塁打、8打点と無双して、大会MVPに輝いた。

「WBC期間中の街頭インタビューで『令和で一番楽しかった』『生まれて一番幸せを感じた』と答える人がいたことが印象的でした。令和になってコロナ禍や戦争、不安定な経済と明るいニュースが少ない中で、侍ジャパンは世の中にものすごく大きなプラスの影響を与えたと思います。前向きになったり、元気をもらったり、改めて野球っていいなと感じたり。栗山監督はこの苦しい社会状況だからこそ、夢や希望を意識したんじゃないかと思うんです。決勝ではDHからクローザーとして登板させた、あの大谷選手の起用法には夢が詰まっている。信じられないことを現実のものとすることで『野球を通じて元気になって下さい』というメッセージを届けていたように思います」

 最終的には7戦全勝で優勝を手にし、これまで野球に興味のなかった人々をも巻き込む“侍ジャパン旋風”が吹き荒れた。この盛り上がりを一過性のもので終わらせないためにはどうしたらいいのか。「所属チームに戻った代表選手がWBCで吸収したものをチームに伝えてくれるはず。WBC出場選手はもちろん、日本の野球がどうなっていくのか、楽しみです」。これから始まる未来こそ、WBC優勝の真価が試される場なのかもしれない。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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