広島市民から「連絡入るよ」…求めるプロの品格 寮の“乱れ”一掃したドラ1の行動|球界群像 道原裕幸#9

広島・栗林良吏【写真:中戸川知世】広島・栗林良吏【写真:中戸川知世】

広島・栗林は寮のトイレスリッパを並べて揃え、現在は習慣化された

 広島には1軍の大州寮(広島市南区)と2軍の大野寮(廿日市市)がある。ルーキーは最初、全員が大野寮に入るが、1軍入りとなれば大州寮へ引っ越していく。大野寮の寮長・道原裕幸氏は「1月に入寮して、キャンプに行くまでの約20日間くらいしか、大野寮にいなかった選手もいますよ」と語る。キャンプ終了時からずっと1軍ならそうなり、1年目から守護神して活躍する栗林良吏投手もそのひとりだ。右腕は短い期間の大野寮生活で、いい“習慣”まで作ってくれたという。

 2020年ドラフト1位でトヨタ自動車から入団した栗林が残したもの。それは大野寮1階のトイレのスリッパに関することだった。道原氏はこう話す。「みんなが使うトイレですから、履き替えるスリッパが3つ置いてあるんですが、よく乱れていたりしたんです。それが栗林が入った年から、いつも3つが揃えてあるようになったんですよ」。

 ある時、道原氏は実際に栗林がスリッパを揃えるところを目撃したそうだ。「栗林に『揃えるんだな』って言ったら『これはもう社会人の時からきつく言われています。みんなが使うんだったら、ちゃんとしておきなさいって。当たり前です』というので『おう、そうか、ありがとう』って言いましたよ」。

 たかがトイレのスリッパ、という話ではない。「2階や3階は人が上がっていくことはないですけど、1階はね。履き替えるところのスリッパがバーッってなっていたら、やっぱりいいイメージがないじゃないですか」。栗林が習慣づけて以降、1階の3つのトイレスリッパはきれいに揃っているという。「選手には栗林がやっていたぞって言ってます。いいことは、そうやって言いますからね」。まさに栗林のおかげで新たなルールができたのだ。

広島・森下暢仁投手【写真:荒川祐史】広島・森下暢仁投手【写真:荒川祐史】

大瀬良や森下も「注意することが本当にない」

「以前、栗林に色紙にサインを頼んだら『一言書くんですか』って聞いてきたから『書いてくれ』って言ったら『謙虚』って書いた。何か考え方がいいなって、その時から思いましたよ」と道原氏。栗林だけではなく「大瀬良(大地投手)や森下(暢仁投手)とかも時間はきっちり守るし、注意することが本当にない。そういう選手は1軍で結果を残す感じはありますよね」。こうした好例があるから、入寮した新人に対して道原氏はまずこう伝えるそうだ。

「広島市民は全員、あなたたちの名前も顔も知っているよ。もしも門限を破ってちょろちょろしていたら、すぐ連絡が入るよって言っているんですよ。それくらい言動、行動はちゃんとしないと駄目だよってね。実際、そうなったらマイナスイメージですからね。挨拶、返事はちゃんとしろよ、横着な人間だなって思われたら損するよってね」

 その上で「荷物はここ(大野寮)にいっぱい置いてもしょうがないよ。とにかく1軍の大州寮に行くようにしてくれ。ここに長くおってもしょうがないよ、厳しいばっかりよって言っているんです」。1日も早く巣立ってほしい。それは2軍寮長としての偽らざる本音だ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜道原裕幸編〜

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