「相手も考えてきている」 千賀滉大が見せた“心理学”…お化けを活かす投球術
決め球はお化けフォークという情報は“逆利用”できる
「初めてのことだったので、体がうまくコントロールできない部分もあったかなというふうに思いますけど、こういう経験を一つずつ乗り越えていきながら、この世界でしっかりやっていけるように準備したいなというふうに思いました」
これまでの2試合と比べ、千賀は制球に苦しんだ。メジャー3試合目で最多の96球を要しながら、初めて5回を終えられず、4四球も最多だった。その背景には、初対戦の敵地での環境や時差など不利な要因があったが、過去2登板から生かした秀逸な投球術が光る場面もあった。
3回2死一、三塁の場面だった。5番ピーターソンを直球3球で見逃し三振に仕留めたが、千賀は勝負球を投げる直前のサインに首を振っている。打者にとっては「フォークが来る」という強い意識を捨てられない0-2カウント。その警戒心を強める状況で首を振られれば迷いが出るのは当然だった。千賀は相手の心中を見透かしたかのような直球勝負で攻めた。
前回登板後、千賀はこんな言葉を残している。
「何回も対戦が増えていけばいくほどフォークボールを振らないようになる。相手も考えてきていると思うので、幅広くやって今後も対策をしていく」
フォークの割合を少なくして挑んだのが前回登板だが、この場面の見逃し三振には、「あるぞあるぞ」と思わせながら、結局、フォークを使うことなくねじ伏せるという魅力的な駆け引きがあった。
予定通りであれば、次回登板もこの西海岸遠征中に予定される。時差にも慣れ、マウンドで躍動する千賀の姿に期待したい。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)