“決めごと”ばかりの生活も「女房を楽に」 神懸かりな1年を支えた妻の献身

先発当日に必ず食べるあんパン…忘れた日は夫人が届けてくれた

「名古屋で先発の日は小さいあんパンを2つ、家から持って行って、球場で食べるのもそう。練習が終わって登板前にね。決まったあんパンがあって、それしか食べない。女房が買ってきてくれるんだけど、それも縁起を担いで食べていた。1回、家にそのあんパンを忘れたことがあった。そしたら、女房が球場まで届けてくれたよ。受付に預けてくれた。あの時はびっくりしたねぇ。係員が『奥様から先ほど届きました』って持って来てくれて……」

 名古屋で先発の日の朝は豚汁。それも決まっていたという。「1回、それで勝ったからね。でも、それは女房を楽にするためだよ。毎回、毎回メニューに困るでしょ。それがひとつでも決まっていると楽でしょ。そう思って結果に関係なく決めごとにしたんだよ」と話したが、1984年の“名古屋12勝”も、その裏に夫人の内助の功があったのは間違いない。

「今でも中日の名古屋での開幕戦の時は赤飯と豚汁。それはずっと続いている。今年もそうだった。『そうか、今日は開幕か』って女房に言ったら『今の人にはこんな奥さん、いないでしょうね』って。『いるわけないじゃないか、だいたい、赤飯を作れないだろ』と、そんな話にもなったね」。鈴木氏のプロ通算成績は124勝94敗96セーブ。それもまた、奈知代夫人がいてくれたからこそ残せた数字であり、夫婦二人三脚によって生まれたものでもある。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY