驚きドラフト指名の日系人に眠る「糸井嘉男級のポテンシャル」 山口アタルが挑む「限界」
日本でも、カナダでも「WBCには出てみたい」 糸井級の能力秘める?
3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を見た。日本中が「侍ジャパン」を応援するのに心を打たれた。「国と国とが一番いい選手を出し合って戦う。こんなに盛り上がって、スペシャルなことはない」。ラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)が代表入りし、海外育ちの日系人が代表入りする扉も開いた。
「僕も日本代表に入りたい。今はすごく遠いけど、WBCには出てみたいです」
カナダ代表の資格も、もちろんある。ただ「カナダでも、もちろんいいんですけど……」という言葉の後に「絶対に僕のことを知らないから」と続けて笑う。鎌ケ谷で修行し、支配下選手、1軍でのプレーとステップを踏んでいけば、おのずと育った国にも伝わるはずだ。目指す選手像ははっきりしている。「ファンを盛り上げられる選手。ムーキー・ベッツ(ドジャース)とか。ダイブすると、ファンもグワっとくるでしょう」。明るいキャラクターを生かし、スタンドと一体になっての活躍を思い描く。
チームはまず、山口に野手としての経験を積んでもらいたいと考えている。木田優夫2軍監督は「糸井嘉男級のポテンシャルがあるかもしれないよ」と成長を見守っている。糸井も鎌ケ谷のグラウンドで育った。最初は外野フライを捕るのにも、四苦八苦していた姿を思い出す。
野手として歩み始めたばかりの山口も同じだ。「最初は打球がくるだけでびっくりしていた。沖縄では捕るだけで精一杯。まだまだ遠いけど、ちょっとずつ近づいてきた感じはあります」。道を切り開く男の「限界」を、見てみたい。
〇著者プロフィール
羽鳥慶太(はとり・けいた)神奈川で生まれ、愛知、埼玉などで育つ。立大卒業後、書籍編集者を経て2001年、道新スポーツに入社。プロ野球日本ハムを12年間担当し、WBCなどの国際大会、アマチュア野球、平昌冬季五輪なども取材する。2021年よりFull-Count編集部所属。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)