大谷翔平へ異例の“リスペクト” 総立ちとブーイング…敵地で起きた「異様な光景」
リアル二刀流で7回5失点も…決勝特大弾含む4安打3打点で5勝目
■エンゼルス 9ー5 オリオールズ(日本時間16日・ボルティモア)
エンゼルスの大谷翔平投手は15日(日本時間16日)、敵地で行われたオリオールズ戦で今季5勝目を挙げた。投手としては、自己ワーストタイとなる3被弾5失点と本来の調子ではなかったが、打撃では特大3ランを含む4安打3打点と大活躍を見せた。史上初となる“先発投手のサイクル安打”に王手をかけた時、そこには異様な光景が広がっていた。
ベーブ・ルースが生まれたボルティモアで、二刀流に“ブーイング”が送られた。決して批判的なものではなく、「サイクル安打を達成できなかったこと」へのブーイングだった。9回2死一塁で迎えた第6打席に大谷が放ったのは、左前に落ちる単打。あと二塁打が出れば自身2度目のサイクル安打達成という状況だった。
この日、大谷は投手としては苦しんだ。1点リードの2回2死一塁からフレイジャーに右越え2ラン。3-2の3回2死一塁では、サンタンダーに再びスイーパーをバックスクリーンに運ばれた。その度に球場は大盛り上がり。打ち上げられる花火に合わせて、地鳴りのような歓声が沸き起こっていた。
流れが変わったのは4回だった。同点の1死一、二塁。打者・大谷が振り抜いた打球は一直線に右翼席へ。今季自身最長となる飛距離456フィート(約139メートル)の特大3ランとなった。その時、オレンジ色が大半を占めるスタンドのファンが、一斉に立ち上がった。カメラで撮影したり、両手をくるくる回して騒いだり、拍手をしたり……。ジェスチャーは様々だったが、総立ちで大谷の本塁打を楽しむファンの姿があった。着ているユニホームは関係なかった。
大谷は第4打席で三塁打を放ち、9回2死で迎えた第6打席。2番のトラウトが四球でつないで回ってきた最後のチャンスだった。ファンは今度は大谷に一斉に拍手を送った。結果は2球で追い込まれ、外角に外れたボール球を片手で拾っての単打。「難しいカウントになってしまったので。二塁打を打つことより、しっかりコンタクトをしたいなと思っていました」。そこで起きたのが冒頭のブーイングだった。大谷も「できれば二塁打を打ちたかったですけど」と振り返った。
試合後には、オリオールズのユニホームを着たファンが、日本メディアのいる記者席に向かって「オオタニ!」と声を上げる場面もあった。相手ファンからも注がれるリスペクト。メジャーリーグで大谷が築いてきたものを感じさせる瞬間だった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)