「やばい、なんかおかしい」ベンチで倒れて救急搬送 入院中に発表された現役引退

浅井氏の引退セレモニー…印象に残る同期・前田智徳氏の号泣

 症状さえ出なければ、まだまだ結果を出す自信があった。ギリギリまで現役続行を希望した。だが、最終的には諦めた。バットを置く決断をした。シーズン最終戦でもあった10月16日の中日戦(広島)での引退試合。「スタメンどうするって言われましたけど、体もしんどいし、代打でお願いしますと言いました」。7回に代打で登場して中前打を放った。

 試合後の引退セレモニー。入団同期で、同い年の前田智徳外野手が号泣していた。「前田が花束贈呈してくれて、ありがたかったですよね。高卒で17年間も同じチームでやれた。前田が一緒にいてくれたのはホント感謝です。最初は絶対負けるかって思ったけど途中から諦めた。超えられるとは絶対思わなかったので、せめて、前田の尻尾くらいは見える距離感は保っておこうって考えていましたね」。

 入団当初はほとんど口もきかなかった。それだけに「前田と話していると周りに茶化されるんですよ。仲が悪かったくせにってね」と浅井氏は笑う。「僕はプロ野球で前田が1番のバッターだと思っている。イチローが2つ下で入ってきて、オリックスで見たけど、全然前田の方が上だと思っていたし、いまだに思っている。一番、打者として尊敬できる人が同級生。今でも“前田”って言えるのは僕の中ですごいなって思えるくらいの存在ですから」。

 浅井氏は右耳を触りながら「今でもこっちは聞こえが悪いです。耳鳴りはするし……。めまいは出ていませんけどね」と話した。最後は病気との闘いも加わってしまったが、1990年のプロ1年目から、やれることはすべて全力でやり抜いた。カープで歩んだ17年間の現役生活。結果的にずっと前田氏を追いかけることにもなったが、間違いなく、どの経験も大きな財産だ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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