大暴投に騒然…失意の大学生に手を差し伸べた黒田博樹　元巨人左腕の激変した野球人生

黒田博樹氏から「僕も君と同じような状態だった」…柴田氏に生まれた変化

「黒田さんから『アメリカまでチームに帯同してるということは、君は元々、普通に投げれてたんでしょ？』と言われまして、『僕も高校時代、君と同じような状態だったんだ。でもほら、今の僕を見てごらん？』と。ドジャースのエースと言われていた黒田さんもイップスを発症していた過去を知り、驚きました」

　偶然の出会いだった。黒田氏のその有難い一言から柴田氏のイップス克服の道が始まった。遠投を繰り返し、気持ちよく投げられる感覚を取り戻すこと、できるだけ右脳を優位にした状態を作るエクササイズを取り入れることで、イップスを克服。ドラフトで指名されるまで回復した。黒田氏には関係者を通じて、プロ入りできたことを伝えたところ、とても喜んでくれた。広島に戻ってきた際は、直接感謝を伝えることができた。

　巨人入団後にも多くの選手に支えられた。育成選手時代には当時1軍で活躍していた内海哲也（現西武2軍投手コーチ）や山口鉄也（現巨人1軍投手コーチ）のグアムでの自主トレに参加。費用を負担してもらい、練習を一緒に行った。

　戦力外通告を受けた後「次の家が見つかるまで、誰か泊めてくれませんか？」と同級生LINEにメッセージしたところ、「いいよー」と同学年の菅野智之投手（巨人）が手を差し伸べてくれた。彼の厚意で“居候”をさせてもらい、時には宮國椋丞投手（現DeNA）や今村信貴投手が遊びに来ては、食事をしながら将来について親身になって考えてくれたという。

　柴田氏はその後、小学生を対象とした「ジャイアンツ・アカデミー」の講師としてセカンドキャリアをスタートさせることになる。ここでノウハウを学び、子どもたちに野球を教える喜び、楽しさを知った。巨人への感謝も忘れてはいない。黒田氏と出会ったように海外に目を向けたのも、環境が違えば、視野も広がることを経験したからだった。