MVP3度のトラウトも「同じ人間なんだな」 鈴木誠也が目撃した“憧れ”の苦悩
初のエンゼルス戦、トラウトの存在は「わからない」
■エンゼルス 3ー1 カブス(日本時間9日・アナハイム)
憧れていた存在の苦しむ姿に自身を重ね合わせた。カブスの鈴木誠也外野手は8日(日本時間9日)、敵地エンゼルス戦で2安打を放ち、6月初となるマルチ安打を記録した。試合前には同じ背番号「27」のスター、マイク・トラウト外野手と初対面。「そこを目指して越せるようにやれれば、いい活躍がこの舞台でもできる」。明確な目標が見つかった。
久々の手応えだった。「打席の中でいいスイングが数多く今日は出せたのでそこが良かったと思います」。4回無死の第2打席で右中間二塁打を放ち、6回1死一塁の第3打席も中前打。6月は試合前まで23打数1安打の打率.043と不調に陥っていたが、復調の兆しを見せた。
走攻守全てにおいてトップを目指してきた。NPB時代、黒田博樹氏(現広島東洋カープ球団アドバイザー)から「こういう選手がいるよ」と教えてもらったのがトラウトだった。その日からトラウトのプレーを見て、練習に励んだ。カブスへの入団会見では「マイク・トラウト、アイ・ラブ・ユー」。持ち前の明るさでジョークを飛ばしたが、実際にどんな存在かと問われると「わからない」。簡単に言葉では言い表せないほど存在は大きい。
そんな“憧れ”のトラウトも今季はここまで打率.262、14本塁打、35打点、出塁率.361、OPS.854。決して悪い成績ではないが、MVPを3回受賞したスターにとっては物足りない。スターの苦しむ姿に「同じ人間なんだな」。憧れから目指すべき存在に変わっていった。
そんなトラウトはこの3連戦、毎日早出で打撃練習を行っていた。その姿を鈴木も一塁側ベンチから見つめていた。「あのくらいの選手でも苦しんでいて、早出で練習している姿を見ると。僕ももっと頑張らないといけないとなと思います。姿勢は素晴らしいものがある」。そう話し、自分を奮起させる。
鈴木は今季ここまで打率.266、7本塁打、19打点、OPS.790。5月17日(同18日)の敵地アストロズ戦では、日本選手初の3打席連発を放ったが、その後は苦戦が続いた。ただ、初のエンゼルス戦でトラウトのプレーを目の当たりにし、「そこに近づければこの世界で活躍できるのは間違いない」。この日の2安打を飛躍のきっかけにしたい。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)