「小心者」が落合博満から聞き出した「強くなる方法」 黒田博樹を覚醒させた“金言”
黒田博樹は4年目まで2桁勝利の壁を破れなかった
元広島投手で、現在は徳島・松茂町議の川端順氏は現役引退後、1993年から2005年まで広島の投手コーチを務めた。最初の2年間は2軍、その後は1軍でチームを支えた。指導した選手は数え切れないほどいるが、印象深い投手としてまず名前を挙げたのはレジェンド右腕・黒田博樹氏だ。思い出すのはプロ入り後、もうひとつ壁をぶち破れないでいる頃の姿。川端投手コーチは、落合博満氏の言葉を伝えたという。
川端氏は余力を残した32歳で現役を引退しただけに、コーチ1年目のキャンプではまだまだ“投手”としても力を発揮した。「2軍のシートバッティングでは、ずっと投げていましたね。途中、1軍のキャンプに行けっていわれて、そこでもシートバッティングでもフリーバッティングでも投げましたよ。『前田(智徳)の調子が悪いから投げてくれ』とも言われて特打でもね」。若きコーチのそれがスタートだった。
黒田氏のことで覚えているのは、それからかなり月日も経った2001年頃のことだ。「黒田は1年目(1997年)から1軍で投げていたけど、4年目まで(6勝、1勝、5勝、9勝と)2桁勝利がなかなかできなかった。そうなると周りの人はいろんなことを言う。特にメンタルが弱いんじゃないかって、よく言われていた。それで話をしたんです」。その時にネタとして話したのが落合氏の言葉だ。
「僕は現役時代、オフになるとプロ野球と大相撲の歌合戦みたいな番組にしょっちゅう、出ていたんです。運動会誰々、クイズ番組誰々とか決めるんだけど、僕はいつも歌番組に回されていたのでね。その時に落合さんと一緒になって、リハーサルの途中に『メンタルってどうやったら、強くなるんですか』って聞いたことあったんです」。川端氏も自身のことを「小心者」と分析し、メンタルは課題のひとつと自覚。川端氏が東芝出身、落合氏が東芝府中出身の縁も巧みに使って、いつも不敵な3冠男に何かヒントをもらおうと尋ねたわけだ。