「小心者」が落合博満から聞き出した「強くなる方法」 黒田博樹を覚醒させた“金言”

広島で選手・指導者として活躍した川端順氏【写真:山口真司】
広島で選手・指導者として活躍した川端順氏【写真:山口真司】

落合博満の言葉「1人に強くなること」を黒田博樹に伝えた

「落合さんからは『1人に強くなることだよ』と言われたんです。それをあの時の黒田にも伝えた。1人になると、もう1人の自分がいるから負けてしまう。1人の人間には弱い人間と強い人間の絶対2人いるじゃないですか。団体でやると、人に動かされたり、人がやっているからやらなければならない、人がやめるとやめる。自分の判断じゃないことが多いでしょ。ピッチャーが孤独なのはそこなんだよって話した」

 黒田氏は黙って聞いていたという。「メンタルが弱いんじゃなしに、人間って誰でも弱いじゃないですか。落合さんも言っていました。『人間って、そんなもん。最初から強い人間って誰もおらんよ』ってね。強くなるために育っていく。育っていって強くなる。そういうことも黒田に言いましたよ。たぶん、覚えてないでしょうけど……。でも、あいつ、ひとりで練習していましたよ。群れを作らずにね」。

 さらに川端氏は「黒田が1年目の時、(広島監督の)三村さんが、オールスターのセ・リーグ監督の(巨人監督の)長嶋さんから『澤崎と黒田、ルーキー2人のうち、どちらか1人を(監督推薦で)出したいけど、どっちがいい』って聞かれたそうなんです。それで三村さんから相談されたので、僕は『今年は沢崎でいいんじゃないですか。黒田は後になって絶対出てきますから』って言ったんですよ、その話も黒田にした覚えがある。これもあいつ覚えてないだろうなぁ」とも。

 黒田氏はプロ5年目の2001年に球宴初出場、12勝をマークして2桁の壁を破り、大投手への道を歩んでいった。「やっぱり、もともと素質があったんで、2桁を勝ちましたよね。2桁どころか、メジャーに行って活躍するようになるしねぇ」と川端氏はうなる。大投手の成長に少しでも役に立てたのなら、コーチとしてうれしい限りだ。「でも、あいつ、覚えてないでしょうけどね」と、また自信なさそうに繰り返したが……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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