定点観測で見つけた吉田正尚の「穴」 チーム打率パ首位も…ポッカリ目立つ“空席”
小田裕也が明かす“空席”の理由
オリックスベンチには、ポッカリとした“空席”が1つだけある。本拠地の京セラドーム、一塁側ベンチの座席をじっと見つめると……。ダグアウトにつながる通路の前から2列目、三塁側から見て左の通路側1席には、いつも誰もいない。昨季までの7年間、レッドソックスの吉田正尚外野手がドッシリと座っていた“指定席”だった。
一塁側ベンチの外野側最端で、冷静に「定点観測」を続ける小田裕也外野手が証言する。「真ん中の席……確かに今、空いていますね。誰が座っても良い場所だから、これまで『正尚の席』という認識はなかったですけど(笑)。トモヤ(森友哉)がDHの時に立っている場所だけど、座っている選手は見かけたことがないですね」。渋みを増した笑顔で“幻影”を見た。
小田は2014年ドラフト8位でオリックスに入団。「僕がプロ野球の世界に入ってから、ずっと正尚はいましたからね。正尚がいない……。最初は想像ができなかった」と話すように、2015年ドラフト1位で入団してきた同じ外野手の“後輩”に、リスペクトの感情を持って接してきた。
ふと目線を上げて言う。「実際、今も正尚がいたらどうだったんだろうね。首位打者が並ぶ打線か……」。森は2019年、吉田は2020年、2021年に首位打者のタイトルを獲得したヒットマン。同じ色のユニホームを着て“競演”することはなかったが、想像は膨らむばかりだ。
吉田がメジャー移籍したタイミングで、森はオリックスにFA移籍。「正尚が抜けたのは正直、痛いけどね。いつも『お願いします』という感じだった。ただ、トモヤがいるのは、やっぱり大きい。ケイタ(中川)もヒットメーカーとして出てきた。中嶋監督がいつも言われているように『全員で』という意識は強まったよね」。明確な役割分担が、チームを活性させる。