「ムラカミは来ているの?」 WBCで虜になった米国の少年…会えず消沈も見つけた“夢”
日米大学野球に出場する侍ジャパンのOP戦を観戦したジョーンズくん
世界中の野球ファンを大熱狂に包んだワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から4か月が経ったが、いまだ盛り上がりを感じる出来事があった。米南東部のノースカロライナ州。現地で第44回日米大学野球選手権を戦う大学日本代表「侍ジャパン」が5日(日本時間6日)、渡米後初のオープン戦を行った。球場のスタンドには、日本国旗をもって「日本代表を応援する!」と笑顔を見せる米国の少年がいた。
侍ジャパンは大学サマーリーグの「ウィルソン・トブス」と対戦。その試合前だった。球場付近のマクドナルドで食事をしていた記者は、突如英語で話しかけられた。
「あなたは日本人? きょうの試合にムラカミは来てるの?」
話しかけてきたのは、9月から高校生になる15歳のオースティン・ジョーンズくん。ウィルソン・トブスの傘下のサマースクール「ウィルソン・プレパラトリー・アカデミー」では一塁と投手を兼任している。ノースカロライナ州在住だが、好きな選手はエンゼルスのマイク・トラウト外野手と大谷翔平投手。「彼らがナンバーワンだ」と興奮気味に話す。この日は、日本代表が試合に来るという話を聞き、観戦に訪れたのだという。
3月のWBCはテレビで観戦。大谷がプレーする侍ジャパンを見て、準決勝のメキシコ戦でヤクルト・村上宗隆内野手のサヨナラ打に魅了されたという。「とてもいいスイングをする。自分もあのようなスイングをしたいよ」と練習に励む。その後は、NPBの試合も見るように。サイ・ヤング賞投手が日本球界入りしたのも当然知っており「(トレバー・)バウアー、99マイル(約159.3キロ)投げていたよね?」と細かい部分もチェックを欠かさない。
記者は食事を終えた後、ジョーンズくんと球場で再会。この日、村上が来ないことを知ると、ショックを隠せず悲しそうな顔を見せた。しかし、「この中から将来、村上選手みたいになる選手が出るかも」と伝えると、すぐに元気を取り戻し、サインをもらいに走っていった。WBCがなければ、ジョーンズくんが大学日本代表の試合を見に来ることはなかったかもしれない。「将来は日本にも行ってみたい!」。侍ジャパンはひとりの少年に新たな夢をもたらしていた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)