コロナ禍経てドラフト上位候補に“変貌” 149キロ右腕が中学時代に見せた片鱗

滝川第二・坂井陽翔【写真:橋本健吾】
滝川第二・坂井陽翔【写真:橋本健吾】

ドラフト上位候補として注目を浴びる最速149キロ右腕の滝川第二・坂井陽翔投手

 今秋のドラフト上位候補として注目を集めているのが、滝川第二(兵庫)のエース・坂井陽翔(はると)投手だ。最速149キロの直球と多彩な変化球を武器に、今夏は自身初の甲子園出場を目指している。その才能を爆発させたのは新型コロナウイルスの蔓延により活動が限定されていた中学・播磨ボーイズ時代だったという。恩師の中上晴彦監督は「コロナ禍の苦しい時期を乗り越え今がある」とターニングポイントを明かす。

 身長186センチ、体重83キロ。自慢の直球に加えカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォークなど多彩な変化球を操る器用さも兼ね備える。1年秋からエースナンバーを背負ったが、報徳学園、神戸国際大付、社、明石商らが揃う「戦国・兵庫」のなかで甲子園は遠く、3年夏がラストチャンスとなった。

 中学時代は同期に絶対的エースの高松成毅(現神戸国際大付)が君臨し、本人いわく「制球難もあって3、4番手の投手だった」と謙遜するが、中上監督は「一番期待していた選手。外野から低く伸びる送球、ボールの強さもあった。内野を守らせてもフィールディングも素晴らしかった。中学3年の春は『陽翔を中心に回す』と決めていたが、コロナ禍もあり断念した。でも、それが結果的に良かった」と振り返る。

 2020年はコロナ禍により学生は休校、私生活でも行動制限が余儀なくされた。中学クラブチームも春の全国大会が中止、3月から5月まで練習試合が禁止になるなど、実戦ができない状況だったという。中上監督はリモートでアドバイスを送り、自主練習で鍛えるよう選手たちを促した。

滝川第二・坂井陽翔【写真:橋本健吾】
滝川第二・坂井陽翔【写真:橋本健吾】

坂井が中学時代に所属していた播磨ボーイズの中上晴彦監督「内に秘めた闘志、いい根性をしている」

 練習が解禁された6月。中上監督は一回り大きくなった坂井の体つきに衝撃を受ける。実際にキャッチボール、ブルペンで投げるボールの質が数段階上がっていた。まだ、中学生の段階では個々の練習で意識を高く持つことは難しい。「人一倍、意識を高く取り組んでいた証拠。ある意味、コロナ禍で陽翔は成長した」。指揮官の期待は確信に変わった。

 一気に才能を開花させた右腕だったが、その後は肘痛もあり一旦は打者に専念。3番打者としてチームを引っ張り、高校進学の際はいくつかの候補の中から「投打の二刀流を認めてくれた」と滝川第二の門を叩いた。すぐさま頭角を現し一躍プロ注目選手に成長したが、高校野球の指導経験を持つ中上監督は「正しいトレーニングとケアをしていれば、これぐらいの投手になることは確信していた。それだけのものを持っていた」と驚くことはない。

 修正ポイントは「頭のブレと肘の使い方」だけ。なにより技術や球速よりも評価していたのは投手としての気質だった。「内に秘めた闘志というか、いい根性をしている。打たれるとクソって顔を見せる時がある。私はそれが大好き。長身の選手によくある鈍臭さもない。まだまだ、成長すると思っている」。中学3年間で成長を見届けた恩師は更なる活躍に期待している。

 投手のポジションに人一倍、執着心を持つ坂井は「ピッチャーは自分にとって主人公。その主人公になりたい気持ちがあった」と口にする。プロも注目する剛腕は“世代No.1投手”の称号を得るため、今夏のマウンドで躍動する。

【実際の動画】最速149キロの直球に多彩な変化球 滝川第二・坂井の投球映像

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