オリ怪物20歳、井口資仁氏が認めた“衝撃的な球” 選手間投票で選出された意味とは?

オリックス・山下舜平大【写真:小林靖】
オリックス・山下舜平大【写真:小林靖】

前半戦を終え、投手陣が安定したチームが上位に定着

 プロ野球はオールスターを終え、いよいよ後半戦へと突入する。セ・リーグは開幕以降好調の続く阪神が首位を守り続けるのか、パ・リーグではV3を目指すオリックスが盤石の戦いを続けるのか。それぞれシーズンの行方が気になるところだが、まずは後半戦が始まる前に前半戦の戦いを振り返っておこう。

 今季から野球評論家として活躍する井口資仁氏に前半戦の総括、そして前半戦に成長が光った若手選手について語ってもらった。井口氏が注目する若手選手とは――。

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 前半戦を終えての順位を見てみると、セ・パ両リーグともにほぼ順当な並びとなっているように思います。セ・リーグに関して言えば、シーズン前の予想通り、阪神、DeNAがしっかりと勝ち、そこに広島が食らいついている。広島は新井貴浩新監督の息づかいなのか、想像以上に勢いがある印象です。それとは対照的に思った以上に苦戦を強いられているのがヤクルト。村上(宗隆)の不調もありますが、投手陣の不安定さが目立ちます。

 上位チームを見てみると、やはり投手陣が盤石。阪神は投手陣が大崩れすることがなく、チーム防御率は12球団トップの2.79。そこに岡田(彰布)監督の手堅い野球がハマって勝ち星が伸びている。DeNAは元々打撃がいいチームですが、バウアーの加入で先発ローテに厚みが加わった。先発投手がしっかり試合を作れると、チームは年間を通して安定した戦いができます。ただし、両チームともに終盤に救援陣が踏ん張りきれずに落とした試合も多いので、決して満足のいく前半戦ではなかったのではないでしょうか。

 パ・リーグは、ソフトバンクが思った以上に勝ち星が伸びていません。特に、最近は投打がかみ合わずに9連敗中。補強を重ねてはいるものの、なかなか結果に反映されません。それに対して、オリックスは選手層の厚さが光る前半戦になりました。山本(由伸)、宮城(大弥)らに加え、山下舜平大がローテに加わったことが大きいし、新外国人のセデーニョ、ゴンザレスもチームにフィットしています。

 ロッテは佐々木朗希を筆頭に、トミー・ジョン手術から復帰した種市(篤暉)や西野(勇士)、小島(和哉)が頑張っている。救援陣もペルドモや益田(直也)らがなんとか最少失点で抑え、その波に打線が乗っている印象で、いい流れが生まれているように思います。

野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】
野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】

オリックスの山下舜平大が選手間投票で選ばれた意味とは…

 前半戦を振り返りながら、最も目を引く成長を見せた選手について考えてみました。勢いのある若手選手が数多く現れた中でも、やはりパ・リーグではオリックス・山下の活躍は頭抜けていますね。彼は今、オリックスのカギを握っていると言っても過言ではないでしょう。オールスターには選手間投票で初出場を果たしましたが、この結果を見ても対戦する打者にとって衝撃的な球を投げているであろうことが想像できます。

 山下は190センチの長身から投げ下ろすストレートやフォークが魅力。球種は少ないながらも、打席に立つバッターは球速以上の速さや球威に圧倒され、まったく手が出なくなってしまうのでしょう。160キロ超の剛球を投げる佐々木朗希ではなく、山下が選手間投票で選ばれた意味は大きい。後半戦もさらなる飛躍を期待する存在ですね。

 セ・リーグでは、ついに覚醒した中日の細川成也の活躍も捨てがたいものの、やはり巨人の大型新人・秋広優人が光りました。中田(翔)、丸(佳浩)らベテラン勢が揃う中、クリーンアップを打てる若手ができた。ファンの皆さんは「やっと」という思いが強いのではないでしょうか。

 秋広の魅力は、何よりも長打を打てること。最近は単打を打って走れる選手が多く出てくる中、巨人の生え抜きで、かつ長打を打てる日本人打者はいなかった。長打が期待できるだけではなく、打率も残せる打者なので楽しみな存在です。前半を終えて、打率.299、8本塁打、25打点。それなりに結果を出していますし、最近では相手先発が左腕の時でも使ってもらえるだけの信頼感を得ています。色々なプレッシャーもあるでしょうが、周りに実績のある先輩がいることを心強く思いながら、スケールの大きいままに成長していってほしい打者ですね。

 秋広がドラフト指名されたのは2020年。僕はロッテの監督としてドラフト会議に臨みましたが、もちろん秋広の名前は指名候補としてスカウトからあがってきていました。ただ、当時のロッテには外野を守る若手選手が多くいたので戦力としてハマらず、指名を見送った経緯があります。2メートルという長身ながらバッティングはやわらかく、器用さも持ち合わせた魅力ある打者。ここからがますます楽しみです。

球宴休み中に行うローテ再編や選手入れ替えから見るチームの意図

 22日からは後半戦がスタートしますが、今年は両リーグともに混戦になるのではないかと予想しています。セ・リーグでは阪神もDeNAも上位にはいるものの、勝ち抜けることはできなかった。ここに広島や巨人がどう絡んでくるか。パ・リーグでは、連敗の続くソフトバンクがこのまま黙っているとは思えません。オールスター休みを挟んで、どんな巻き返しを図ってくるのかに注目が集まります。

 オールスター休みの間、監督やコーチは後半戦のカードを見ながら、どこにエース級をあてていくのが効果的かを考えながら、先発ローテーションを再編します。野手も当然入れ替えがあるでしょう。それぞれのチームが後半戦はどんな戦いをしようとしているのか、その意図が最初のカードから見えてくるはずです。そんなことも考えながら、この週末は試合を見てみると面白いかもしれません。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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