小学校では「怖かった」…佐々木麟太郎との最後の夏 “逆転の花巻東”が信じる復活

花巻東・佐々木麟太郎(中央)と花巻東ナイン【写真:羽鳥慶太】
花巻東・佐々木麟太郎(中央)と花巻東ナイン【写真:羽鳥慶太】

花巻東は岩手大会で6年連続の準決勝へ…3試合連続の逆転勝利

 第105回全国高校野球選手権の岩手県大会は22日、準々決勝4試合を盛岡市のきたぎんボールパークなどで行い、高校通算140発を誇る佐々木麟太郎内野手(3年)を擁する花巻東は8-1(7回コールド)で盛岡誠桜を下し、6年連続(2020年の独自大会含む)の準決勝進出を決めた。

 佐々木麟は2試合ぶりにスタメン復帰したものの、2打数無安打。苦しい展開からの逆転が“お家芸”となりつつあるチームに残された課題が、主砲の復活だ。

 花巻東は初回に1点の先制を許した。実はこの夏戦った3試合は、すべて先行されている。20日の水沢商との3回戦も、序盤に2点をリードされ、延長11回タイブレークの末に何とか白星を拾った。

 佐々木洋監督は「毎試合先行されていて、いつも通りだなと話をしましたね。逆に負けていても焦らないですし『この間負けたと思って、開き直ってやれ』と言いました」と“逆転”がチームカラーとなりつつある現状も、チームの成長と捉えている。

 その言葉通り、3回に敵失で同点に追いつき、5回には打者9人を送り3点を奪って勝ち越し。1-1の2死三塁から、左翼へ決勝三塁打を放ったのが「1番・右翼」で先発した久慈颯大外野手(3年)だ。続く「2番・遊撃」の熊谷陸内野手(3年)も左翼へ適時打。指揮官は「2人とも反対へ打ってくれて、攻撃は徹底できたのが良かったと思います」と納得顔だ。

決勝打の久慈颯大は麟太郎を信じる「焦ることはないと言っています」

 殊勲の久慈は、三塁に頭から突っ込むと、塁上で大きなガッツポーズを見せた。追いかける立場でも焦りはない。「前の試合も序盤に失点してしまったけど、乗り越えられた。今回も行けるとはみんなで話をしました」。逆に読みも冴えた。「外中心に速いボールが来ると思っていたので、しっかりそのボールを狙って打つことができた」。大振りせず、反対方向に狙って打つことで、みごと攻略してみせた。

 ただ、ここから先の戦いに、佐々木麟の強打が必要なことは皆が感じている。この日は初回の打席が空振り三振、4回は一邪飛、5回は打撃妨害、6回は申告敬遠で出塁したものの、快音は聞かれなかった。背中に違和感があり、3回戦ではスタメンを外れて代打出場。2試合ぶりに先発メンバーに戻っても、状態は父でもある佐々木監督が「見てのとおりです。(スイングが)鈍いの一言」というほどだ。

 久慈も「いまは麟太郎の調子が良くない。復活するまではカバーしながらやっていきたい」と口にする。自身や熊谷が出塁して、佐々木麟の長打が飛びだすという流れができれば、苦しい展開も減るはずだ。

「9番、1番、2番で出塁して、麟太郎が返すというのがパターン。麟太郎にも、焦ることはないと言っています。力があるのは分かっているので」

 久慈は佐々木麟と、小学校時代の選抜チームで一緒にプレーしたことがある。「麟太郎はその時から身長が174センチあって……。すごく迫力があって怖かった」と笑う。友と戦う最後の夏。誰よりも復活と爆発を信じている。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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