「鈍いの一言」から中1日で3安打 花巻東・佐々木麟太郎の“復調”助けた意外な特技

「3番・一塁」で先発した花巻東・佐々木麟太郎(中央)【写真:羽鳥慶太】
「3番・一塁」で先発した花巻東・佐々木麟太郎(中央)【写真:羽鳥慶太】

準決勝で盛岡第一に逆転勝ちの花巻東、佐々木麟は3安打1打点

 第105回全国高校野球選手権の岩手大会は24日、盛岡市のきたぎんボールパークで準決勝2試合を行い、花巻東が盛岡一を10-4で下して、2019年以来4年ぶりの夏の甲子園に王手をかけた。高校通算140発のスラッガー、佐々木麟太郎内野手(3年)はこの試合に「3番・一塁」で先発出場し、3安打1打点の活躍。2打数無安打に終わった準々決勝から中1日での修正を助けたのは“意外な”特技だった。

 この日の佐々木麟は初回に右前打、3回に中前適時打、5回先頭で中前打と3本の安打を連ねた。7回の第4打席は、二塁への強烈なゴロが敵失を誘い生きた。この回の猛攻でもう1度回った打席は、申告敬遠で歩かされた。

 父でもある佐々木洋監督は、背中の違和感に苦しんできた佐々木麟の現状について「これまでは動けていなかったのが、キレが出てきたのかな。動きが前の試合とは違う。決勝へ1日開けて、ベストの状態へ持っていければ」と口にした。22日の準々決勝後には「見ての通りです。(スイングが)鈍いの一言」としていたのに比べれば、急上昇のカーブを描いているといえそうだ。ここでカギとなったのが、22日の試合後にこなした練習だ。

 取り組んだのは水泳、ウエートトレーニングというハードなメニューだった。指揮官は「筋肉に刺激を入れてみようということで」と狙いを話す。その結果「状態が上がっているのも確認できた。その後でバッティングをしたら、マメができたとも言っていたので」。監督の狙い通り、持てるパワーを存分に発揮できる体制が整ってきた。

盛岡一戦でヒットを放った花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】
盛岡一戦でヒットを放った花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】

準々決勝の試合後はプールへ…「幼稚園の年中から通っていた」

 大会中に水泳を練習に取り入れるとはあまり聞かないが、珍しいことではないという。佐々木麟によれば泳いだ時間は「30分くらいですかね。幼稚園の年中から、スイミングに通っていたこともあるので……」。個人メドレーの種目にあるクロール、平泳ぎ、バタフライ、背泳ぎのいずれもお手の物だという。

「(筋肉が)固まっているのを整えるとか、細かい部分を大きく使うという効果があると思います」

 佐々木麟の今大会は、10打数4安打の打率4割。ただ全て単打で、長打はまだない。指揮官は「本塁打とか記録とかはいらない。チームの勝ちに貢献できる打撃をするように言っている」と口にし、佐々木麟も「ホームランを入れようとは思っていませんし、チームが勝つために自分の役割を果たすことしか考えていない」と呼応するが、一方で「打球の質は悪くない。角度が上がりきっていない」とも分析している。

 この日の試合は、今大会4試合目にして初めて先制した花巻東だが、6回には一時3-4と逆転を許した。「苦しい試合でしたけど、取り返すイメージはできていた」と佐々木麟。後を打つ4番の千葉柚樹内野手(3年)と5番の北條慎治投手(3年)がそれぞれ2打点をあげ、打線に流れが生まれてきた。

 いよいよ決勝だ。待たれるのは佐々木麟の大爆発。「花巻東の集大成を見せたい」という言葉通りの豪打を見せてくれるだろうか。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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