2時間だけの練習を「言い訳にしない」 花巻東に挑む進学校…盛岡三の“野球偏差値”

12年ぶりの決勝進出を決め笑顔の盛岡三ナイン【写真:羽鳥慶太】
12年ぶりの決勝進出を決め笑顔の盛岡三ナイン【写真:羽鳥慶太】

盛岡三は12年ぶりの決勝進出…活路を開いた超・攻撃走塁

 第105回全国高校野球選手権の岩手大会は24日、準決勝2試合を行い、盛岡三が盛岡商を5-1で下して2011年以来、12年ぶりの決勝進出を決めた。対戦するのは、高校通算140発を誇る佐々木麟太郎内野手(3年)を擁する花巻東。県内有数の進学校でもある盛岡三は、鍛え上げた“野球偏差値”で勝負する。

 盛岡三は準決勝の3回、盛岡商に1点の先制を許した。今大会4試合目にして初失点だ。ただ慌てることはなかった。直後に四球と安打で1死一、三塁の好機をつくると、さらに一走が二盗を成功させプレッシャーをかける。菊地祐輝外野手(3年)の三ゴロで三走が本塁に突入し同点。さらに駒井優樹内野手(3年)の遊ゴロの間に勝ち越した。

 5回には1死から駒井が二塁打で出塁。さらに三盗を仕掛けると、捕手の悪送球で3点目。7回には無死一、三塁から鈴木暖人内野手(3年)が右前に適時打。さらに鈴木が一、二塁間で挟まれる間に一走まで生還した。ひとつでも前の塁に進もうという姿勢で活路を開いた。

 今年4月に、一関一から赴任した伊藤崇監督も「今日は新しいバラエティというか、粘り強くできた」と納得顔だ。5回に3点目のきっかけとなった駒井の三盗も「行けたら行けというサインでした」とサラリ。「野球偏差値が上がるようなプレーをしようと言っていますが、理解度が本当に高い。なんとなくバッティングをするのではなく、目的と根拠を繰り返すんです」と、ナインの成長に目を細める。

今春の東北大会では仙台育英に善戦、連日2時間だけの練習は“超濃密”

 今春の岩手県大会では3位となり、東北大会に進出。準決勝で敗れこそしたものの、仙台育英(宮城)に0-3と善戦した。この戦いは、チームに大きな自信を植え付けた。「それまでは甲子園と言っていてもおぼろげだったのが、あれで明確になった」と伊藤監督。夏への準備は熱を帯びた。

 進学校ということもあり、平日の授業は7限まである。午後7時にはグラウンドを出なければならず、練習は毎日2時間に限られる。その中で最大の成果を発揮しようと取り組んできた。

「根拠のない瞬間をつくらないようにしています」と指揮官。主将の田村悠人捕手(3年)は「例えば2時間で守備と打撃、両方鍛えようとしてもできません。それなら1日1日に課題を設定して、それを消化する。今日は打撃なら打撃を徹底的にやれば、2時間をそれ以上に使えるんです。時間を言い訳にはしたくないので」と、日々の工夫を明快に説明してみせる。

 攻めの走塁についても田村は「プレスをかけることで、相手の投手や野手の動揺を誘える。隙をつくことができるんです」と、してやったりの表情を見せた。野球を常に考え、広い視野で場面をとらえる。まさに“野球偏差値”の高さが生んだ決勝進出だった。

 もちろん、決勝での戦い方についても、すでに頭を巡らせている。司令塔の田村は、初対戦だという花巻東のイメージを膨らませ「言えませんが、対策はあります」とキッパリ。チームにはデータ班が存在し、投手や野手の情報収集だけでなく、野手のポジショニングなども分析しており「今日も助けられました」。花巻東打線の中心に座る佐々木麟との対決で、何が見られるか。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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