空振り三振でも「結果はどうでもいい」 原監督が絶賛した“吉川尚輝の10球”

ヤクルト戦に出場した巨人・吉川尚輝【写真:矢口亨】
ヤクルト戦に出場した巨人・吉川尚輝【写真:矢口亨】

坂本の11号ソロ、岡本和の逆転23号2ランの呼び水に

■巨人 9ー2 ヤクルト(2日・東京ドーム)

 巨人は2日、本拠地・東京ドームでヤクルトに9-2で大勝。それまで今季2戦2敗、対戦防御率1.73(計12イニングで2得点)と抑えられていた相手先発の左腕・高橋奎二投手に、4本塁打を浴びせて6点を奪い4回KOした。背景には、前日(1日)の同カードで零封負けを喫した反省があった。

 怒涛の攻撃だった。巨人は2点を先行されて迎えた初回、1死から坂本勇人内野手が初球のチェンジアップを左中間へ放り込む11号ソロ。続く梶谷隆幸外野手もカウント0-2と追い込まれながら、カーブを右翼フェンス直撃二塁打。そして4番・岡本和真内野手が、初球のカーブをとらえて左翼席へ23号2ランを放ち、あっという間に逆転に成功した。

 しかし、猛攻のきっかけは、空振り三振に終わった先頭・吉川尚輝内野手の打席にあった。吉川は5球のファウルを含めて粘りに粘り、10球目のカーブを振らされ三振に倒れたが、高橋に速球、カーブ、チェンジアップ、カットボールと様々な球種を投げさせた。だからこそ、坂本も岡本和も1打席目の初球に、スピードの遅い変化球を完璧なタイミングでとらえることができた。坂本は「ヨーイ・ドンの初回でしたが、尚輝が粘ってくれたお陰で、初球からいきやすい状況があった」とうなずいた。

 原辰徳監督も「あれは大きいでしょうね。結果は三振でしたけどね、いい粘りでしたね。ああいうことがすごく大事」と吉川を絶賛。と言うのも、前日の同カードでは早打ちがたたり、初対戦のプロ3年目左腕・山野太一投手に7回無失点と抑え込まれ、結局0-1の零封負けを喫していた。とりわけ2回には、先頭の5番・秋広優人内野手が1打席目の初球のストレートを打ち上げ中飛、続く6番・丸佳浩外野手も初球のストレートを打って出て二ゴロに倒れていた。

「1球目、2球目は『見てくれ』とチームにあげるくらいでないと」

 山野にとってはプロ入り後2試合目の登板だっただけに、原監督は「相手は立ち上がりに、すごく不安を持ちながら投げてきていたはず。こちらにとっては、誰も当たったことのない投手でしょう。それを理解するならば、中心選手が1打席目の初球をカーン、カーンと打ったというのは、今後はあってはいけないことではないかと思う」と苦言を呈した。そして「選手を責めているのではなく、私自身、それをきちんと指示できなかったことを反省している」と付け加えた。

 対照的に「(1打席目の)1球目、2球目はストライクだろうが何だろうが、『見てくれ』とチームにあげるくらいでないと、打線ってつながらないよね。それが今日の尚輝の1打席目だったと思う。道のり、プロセスが大事で、結果はどうでもいいわけ」と説明した。

「個人の記録もあるけれど、チーム単位で動いているわけだから。ましてや、昨日のような(データのない)投手が出てくるのは100試合か200試合に1回ですから」と強調した原監督。まさに野球の真髄だが、同時に初対戦の若い左腕から1点も取れなかったことが、よほど悔しかったのも確かなようだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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