守備力の劇的改善で前期V　名手・菊池涼介を支えたコーチが台湾で伝える“考える練習”

広島・オリックスでプレーし、広島で12年間コーチを務めた統一・玉木朋孝コーチ

　台湾プロ野球（CPBL）の前期シーズンは、統一ライオンズが34勝24敗2分で優勝を果たした。前期制覇の立役者の1人として、昨季はリーグ最下位だった守備率を、リーグ2位へと引き上げた玉木朋孝内野守備コーチの存在があった。

　玉木コーチは、1994年から広島、オリックスで12年プレーし、守備の名手として知られた。引退後は広島のスコアラーを経て、昨年まで12年間に渡り内野守備・走塁コーチを務めた。田中広輔内野手、菊池涼介内野手の「タナキク」コンビを支えた存在としても知られる。

　初の台湾球界での指導となった春季キャンプでは、当て捕り用の「フラットグラブ」で手本を見せて、内野守備の基本的な動作から指導を始めた。当初は2軍で若手の育成にあたるという話だったが、林岳平監督から1軍を見てほしいと要請され、開幕後、数週間2軍に同行した以外は、1軍メインで指導を行っている。ここでは統一の前期優勝に貢献した玉木コーチにインタビューを実施し、台湾での指導について、日台の野球の違いについて話を聞いた。

粘り強く選手に語りかけ「選手に自覚が生まれてきた」

――前期シーズン優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます。（感想は）ビールかけまでさせてもらって、素直に嬉しいんですけど、『前期優勝』というのは経験がないので。まだ戦いがあるので、素直には喜べないというか、まだまだだという思いがあります」

――台湾メディアも、前期優勝の要因の1つとして、内野守備の向上を指摘しています。手応えは感じていますか？
「最初に（台湾に）来た時に一番思ったのが、基本ができていないという点でした。基本があってこそ試合での応用になってくるので、まずはそこを徹底させたという感じです。キャンプ中にできなかったこともあるんですけど、改善を続けたことが、シーズンに入った時にも、意識して取り組むことで結果に出ているのではないかなと。正直、まだまだではあるんですが。あとは捕る形とか基本だけじゃなくて、メンタル面とかも、個々に言ってきたもので、選手に自覚が生まれてきたんじゃないかな、と思います」

――昨季は二塁との併用だった23歳の林靖凱をショートで固定して使いました。ショートに固定した決め手は？
「ぱっと見て、ショートを守らせるなら彼しかいなかった。今後に生かすために、今年はショートでやったほうがいいと思い、監督にも提案しました。彼をショートに固定すれば、セカンドが空くので他の選手にもチャンスが出てきますし」

台湾の野球は日本に比べ「攻撃の時も、守備の時もにぎやか」

――NPBではセ・パ両リーグでプレーし、指導者も務めた玉木コーチから見た台湾プロ野球の魅力はなんですか？
「全体的に身体能力の高い選手が多いことだと思います。あとは、いい意味でも悪い意味でも仲がいいというか、みんなでワイワイやるっていうのは、魅力なんじゃないですかね。あとは、ファンが盛り上がるんでこれも魅力だと思います。日本と違って、攻撃の時も、守備の時もにぎやかなので、お客さんは喜びますよね。それに、カープにはチアはいないので、チアも新鮮に思いました」

――統一の選手たちに対して感じる課題、改善してほしい点について、どのような言葉をかけていますか？
「僕は『練習をおろそかにするな』ってよく言うんです。練習を適当にやっていると、試合でもそういった点が必ず出るので。それは日本でも言ってきたんですけどね。何をするにも意識しながら、考えながら意図が見える練習をしてほしいし、そうしないと成長しないので。特に、若い選手は1球をおろそかにしてはいけないのでね。そこはしっかりやってほしいですね」

――後期シーズン、プレーオフ以降に向けた抱負、意気込みをお願いします。
「キャンプで集まった時、『最後、笑顔で終われるようにね』って言ったんですよ。その通りになってほしいです。前半は笑顔で終われましたけど、もう1回、皆で笑って、となるとやはり優勝。その中で、私は守備担当なんで、さらに強化して、意識をさせたい。エラーを減らすってこと自体は目標ではないんです。野球人として、当たり前のことを当たり前にやってもらいたい。27個の内野ゴロがきたらしっかりアウトにするって意識をしてほしいし、それは練習からやってもらいたいですね」

（「パ・リーグ インサイト」駒田英）

（記事提供：パ・リーグ インサイト）