原監督「全ての野球人に対し申し訳ない」 自力V消滅…助っ人の痛恨走塁を謝罪
0-0の5回に放った大飛球“確信歩き”があだに
■阪神 5ー2 巨人(9日・東京ドーム)
巨人は9日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に延長11回の末2-5で敗れ、44試合を残して自力優勝の可能性が消滅した。首位の阪神に10ゲーム差をつけられ4位。阪神には直接対決でも4勝11敗1分と水をあけられている。ただ、原辰徳監督がこの試合で何より悔やんだのは、勝敗に関することではなかった。
0-0で迎えた5回の攻撃だった。「6番・中堅」でスタメン出場していたルイス・ブリンソン外野手が1死走者なしで、好投していた阪神先発ジェレミー・ビーズリー投手の150キロ速球をとらえ、中堅方向へ大飛球を放った。ブリンソンは打った瞬間“確信歩き”し、その後ジョギング程度の速さで走り始めたが、なんと打球は中堅フェンス上部に直撃して跳ね返る。打球が高く舞い上がっていた分、普通に走っていれば二塁まではいけたはずだが、まさかのシングルヒット止まりとなった。
巨人はこの後、門脇誠内野手が右飛。続く中山礼都内野手の左前打の間に、スタートを切っていたブリンソンは三塁を陥れて2死一、三塁としたが、打順が投手のフォスター・グリフィンに回り見逃し三振。ここで先制できなかったことは、後々まで響いた。
原監督は試合後、淡々と、少し寂しそうにブリンソンのプレーをこう評した。「申し訳ないね。我々の指導不足だね。(野球を)志す少年たちに対しても、全ての野球人に対しても、私自身の指導不足というところで、非常に恥ずかしいプレーでしたね」。
怠慢と言わざるをえないプレーが1つあると、その他のプレーまで先入観を持って見られてしまいがちだ。2-2で迎えた延長11回の守備。1死満塁のピンチで、阪神・梅野隆太郎捕手の詰まった打球が小飛球となって中前へ上がる。センターのブリンソンは少しためらいながら前進したが、ボールは目の前に落ち、三塁走者の大山悠輔内野手が勝ち越しのホームを踏んだ。ブリンソンはスタートの遅れた二塁走者の島田海吏外野手を三塁送球で封殺し、梅野の一打は打点付きの“センターゴロ”となった。
手首の怪我から1軍復帰し、最近7試合連続スタメン
勝敗を分ける打球だっただけに、ブリンソンはダイレクトで捕球すべく、もっとチャージをかけるべきだったのだろうか。原監督は複雑な表情を浮かべつつ、「その辺は……我々はチャージしていた、懸命にやってくれているという判断ですから」とそれ以上責めることはなかった。
来日1年目のブリンソンは「1番・中堅」の座に定着しつつあったが、7月13日・広島戦(東京ドーム)の試合中に左手首を痛め、同16日に出場選手登録抹消。それでも同28日に1軍復帰を果たし、最近はまた7試合スタメンが続いていた。本来は一発を秘めた打撃、俊足で躍動感あふれるプレーが魅力だが、一方で走者として判断ミスやボーンヘッドが目立つのも確か。名誉挽回には、よほど気持ちを引き締めてかかる必要がありそうだ。
打ったら、どんな打球であれ全力で走るのが当たり前であるのと同様、自力であろうがなかろうが、優勝の可能性がある限り、それを信じて全力を尽くすのも当然。原監督はもう1度手綱を引き締め直す。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)