亡き友の魂と一緒に戦った最後の夏 「打てないチーム」を変えた“孝成のマシン”

大会5日目第2試合、明豊(大分)は延長の末、北海(南北海道)に8-9で敗れ聖地を去った
大会5日目第2試合、明豊(大分)は延長の末、北海(南北海道)に8-9で敗れ聖地を去った

北海の猛追に屈した明豊…それでも打線は15安打を放つ

 第105回全国高校野球選手権大会は10日、大会5日目の3試合が行われ、第2試合では3年連続夏出場の明豊(大分)が延長10回タイブレークの末、最多40回目の出場の北海(南北海道)に8-9で破れた。川崎絢平監督は「最後はうちも粘りましたし、北海さんも素晴らしい戦いだったし、悔しいですけど、北海さんには(次戦も)頑張ってもらいたい」と健闘を称えた。

 主将の4番・西村元希外野手(3年)は「春から『打てない、ピッチャー中心のチーム』と言われていた」というものの、この日の明豊打線は、2本の長打を含む15安打と爆発した。2回に主将の中前打で口火を切ると、3回に3番・柴田廉之助内野手(3年)の右前適時打で先制。5回にも西村の右中間三塁打で勝ち越し点を得た。7回には6番・石田智能外野手(2年)の右越え三塁打などで一挙4点を奪う猛攻をみせたが、北海打線の追い上げを逃れ切れなかった。

 打てるチームへと成長させたのは、亡くなったチームメートの“魂”だったのかもしれない。昨年8月、宮崎県内で行っていた練習試合中に、打者のファウルチップが吉川孝成捕手(当時2年)の鎖骨付近に当たり、吉川さんはその場で意識を失った。もともと脳動脈瘤を患っていたという。仲間から応援動画やメッセージが届いたが、緊急入院をした宮崎県内の病院で2か月半後に息を引き取った。

「息子が宮崎で倒れてから学校関係者に支えられました。選手たちもみんな、いつも目をキラキラさせて近寄ってきてくれる。そのお礼に」と、今年のゴールデンウイーク前、吉川さんの両親からチームへ打撃マシンが寄贈された。同級生である今の3年生は、その打撃マシンに吉川さんの“魂”が宿っているように感じるという。

“魂”も一緒に兵庫県入り…「ここを打たないとダメだぞ」

「(マシンが投じる球の)コースが本当は一定のはずなのに、一定のところへ来なかったりする」と西村。生前、明るく人懐っこい性格で、バッティングピッチャーもよく務めていたという吉川さんと打撃マシンとを重ね合わせた。

「苦手な所を攻めてきてるのかなって。『ここを打たないとダメだぞ』という風に投げてくれていると思います。勝負をしているような感覚でマシンを打てたので、すごく良い練習になったというか。“孝成のマシン”が来てから本当に3年生の打撃がものすごい上がってきた」。大分からフェリーに乗せ、“孝成のマシン”も一緒に兵庫県入りした。

 夏の地方大会で打撃不振に苦しんだ西村はこの日、吉川さんのバットを使って4打数3安打1四球と復調し、打線をけん引した。亡き友に鍛えられ、たどり着いた甲子園。勝利を届けることはできなかったが、「(僕が)キャプテンとしてチームをまとめたんじゃなくて、孝成が全員をまとめてくれた。『本当にありがとう。この夢舞台でプレーさせてくれて、そして一緒にプレーしてくれてありがとう』と伝えたいです」と涙を拭った。

※23時22分、一部を加筆・修正しました。お詫びして訂正いたします。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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