甲子園を包んだ拍手を「勝ちに変えられなかった」 初出場で遭遇した“魔物”の存在

宮崎学園は文星芸大付に逆転負けを喫した
宮崎学園は文星芸大付に逆転負けを喫した

2点を追う9回、甲子園のスタンドは手拍子で宮崎学園ナインを後押し

 第105回全国高校野球選手権は11日、阪神甲子園球場で大会6日目の4試合を行い、第4試合では初出場の宮崎学園(宮崎)が、文星芸大付(栃木)に7-9で逆転負けを喫した。4回に5点を奪って逆転し、終始優勢に試合を進めたが8回、守備の乱れから再逆転を許した。2点を追う9回の攻撃では、スタンドが揺れるような手拍子での大声援。甲子園の“魔物”がうごめき出すかと思われたが、走者を2人出したものの万事休す。田口周主将(3年)は「応援を勝ちに変えられなかった」と涙を流した。

 2点を追う9回の攻撃、三塁側の宮崎学園のアルプススタンドからの応援は、さざ波のように甲子園のスタンドへ広がっていった。選手を包むかのような手拍子での大声援。先頭の瀬尾修也内野手(3年)が遊撃内野安打で出塁すると、さらにボルテージは高まった。1死後、川越魁斗外野手(3年)も右前打で続く。8回に逆転を許す失策を犯していた川越には、ひときわ大きな声援が送られた。

 1死一、二塁で打席には「6番・一塁」の田口主将。三塁への強いゴロを放ったもののそのままベースを踏まれ、二塁に転送されて併殺に。スタンドからは勝者にも、敗者にも大きな拍手が送られた。試合後、涙を流して取材に応じた田口は「試合が始まった時からそうなんですけど、一塁側からも応援してくれて、僕らを迎え入れてくれている感じがありました」。初出場の学校へ向けられた、温かい眼差しに気付いていた。

 甲子園には魔物がいるとよく言う。始めて足を踏み入れた宮崎学園ナインは、流れの恐ろしさを思い知った。5回までに7-3とリードして7回、1死から四球と3連打で2点を失い7-5と2点差に迫られた。その裏の攻撃は3者凡退。すると8回、文星芸大付の猛反撃が待っていた。

出会った恐ろしい“魔物”「あの時間帯は特に見えなかった」

 先頭の江田修外野手(3年)が中越え二塁打で出塁、失策で三進を許し、走者一、三塁で工藤逞投手(3年)の打球は右翼へ。右翼手の川越は打球に向かって前進したものの逸らし、ボールは右翼フェンスまで点々。2人の走者ばかりか、打者走者の工藤まで生還して7-8と逆転を許した。

 田口は「チャレンジした守備なので仕方ない。走者を刺そうとした気持ちが前に出ただけ」と川越を思いやる。日没寸前で、空には明るさがわずかに残る中で照明が点灯された。一塁手の田口は川越と同じ方向から打球を見ていたが「めちゃめちゃ見づらかった……。シートノックの時から、ネット裏に白いシャツの人が多くてボールと被っていたんですけど、あの時間帯は特に見えなかった」。プレーしてみないと分からないことが、甲子園にはたくさんあった。

 この日、164球を投げ完投した河野伸一朗投手は2年生。身長189センチの長身からのボールで、序盤は文星芸大付打線を手玉に取った。「悔しいです。いまの3年生と野球をできなくなる」と口にし、逆転を許した8回は「体力の限界がきていた。ここは気力で行くしかないと思っていた」と明かす。恐ろしさも、温かさも味わった学校初の甲子園。ここから歴史は紡がれていく。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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