点差ついても鬼継投…仙台育英・須江監督が感じた聖光の“脅威”「許してくれない」

仙台育英・須江航監督【写真:小林靖】
仙台育英・須江航監督【写真:小林靖】

2試合連続の2桁安打…それでも須江監督は聖光学院に「とても強かった」

 第105回全国高校野球選手権は12日、阪神甲子園球場で大会7日目の4試合を行い、第4試合では連覇を目指す仙台育英(宮城)が聖光学院(福島)を8-2で下して3回戦に進出した。打線は2試合連続の2桁安打と活発な中、先発の田中優飛投手(3年)から湯田統真投手(3年)、高橋煌稀投手(3年)と県大会で実績を積んだ投手を惜しみなくつぎ込む継投。須江航監督は試合後「聖光さんは許してくれないので」と“鬼継投”の舞台裏を語った。

 投打がかみ合っての、盤石の勝利に見える。それでも試合後の指揮官は聖光学院について問われると「とても強かった。思っていたより、ずっと」と言葉を絞り出した。

 初回に先制したものの序盤は点の取り合い。2回を終えて3-1とリードし、迎えた4回だった。田中が1死から聖光学院の杉山由朗捕手(3年)に右翼席へ飛び込む本塁打を浴び、続く三好元気外野手(3年)にも右中間二塁打を許した。2死までこぎ着けたものの、ここで浦和学院との1回戦に先発した湯田をリリーフに送った。

「たまたまリードできたので……。これで同点、逆転されてはおかしくなる」と須江監督。投入に迷いはなかった。「継投の遅れだけは絶対にできないと、何十回も自分に言い聞かせていましたから」。判断の根拠には天気予報まで含まれていた。台風が接近しているため、3回戦の前に試合中止が生まれる可能性がある。「そうなれば中4日になりますからね」。逃げ切るための“覚悟”ができた。

1回戦で4失点降板の湯田が快投、不調の理由は「下半身に来ていて…」

 湯田は浦和学院との1回戦、9-0とリードした4回に4連打などで4点を返され、5回途中まで8安打4失点で降板を強いられていた。ただ打ち込まれた原因は、冷静に分析している。「初戦は疲労が溜まっていました。トレーニングをやりすぎたかな」と苦笑いだ。下半身を鍛えるウエートトレーニングを「前日にやりすぎて、次の日は下半身に来ていて……」。ホテルでの生活から見直し、第4試合に最大の力を発揮する準備をしていた。

 先発ではなかったこの日は、出番を常にうかがいながら準備を進めた。「2巡目、4回を目安に動いていましたから」という言葉は、指揮官の意図とピッタリはまっていた。登板したのは1点リードの2死二塁というピンチ。松尾学武外野手(3年)と対し「もう2死だったので、バッターにとにかく得意な球を投げていくだけでした」。カウント1-2から外角のスライダーを打たせて二ゴロ。続く5回は3者凡退に抑えて流れをつくり、8回までの4回1/3を4安打無失点で乗り切った。

 打線が7回に3点、8回に2点を奪い、8-2とリードを広げた9回には背番号1の高橋まで投入。盤石の体勢で逃げ切った。指揮官は石橋をたたくような継投の狙いを、真顔で「聖光さんは許してくれないので。離しても離しても絶対ついてくる。最善で行かないと奇跡が起きてしまうので」と口にする。東北で戦うライバル同士。やってやり過ぎることはないという判断だった。

 連覇を狙うチームは着実にレベルアップしている。湯田は昨年との違いを「去年は甲子園に飲まれていましたね。自分の球を投げるのが精いっぱいだった。今年は周りの野手を見て、冷静に投げられている」と説明してみせた。日本一への方程式は、すでに描かれている。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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