「また真面目な子たちと、甲子園に来ますよ」 孫と挑戦の3年間…79歳老将の思い

大垣日大は延長10回タイブレークの末に3-4でおかやま山陽に敗れた
大垣日大は延長10回タイブレークの末に3-4でおかやま山陽に敗れた

大垣日大の阪口慶三監督は、敗戦にも選手へ温かい言葉

 第105回全国高校野球選手権は13日、大会第8日の4試合を行い、第4試合では大垣日大(岐阜)が延長10回タイブレークの末に3-4でおかやま山陽(岡山)に敗れ、2007年以来の3回戦進出はならなかった。チームを率いる阪口慶三監督は1944年生まれの79歳、甲子園通算40勝の名将。「また真面目な子たちと、甲子園に来ますよ」と熱い挑戦を続けていく。

 大垣日大は初回に2点の先制を許したものの、2回に岩本千空外野手(3年)のスクイズで1点を返した。そして8回には監督の孫でもある「4番・捕手」の高橋慎(3年)が右翼ポール際にソロ本塁打を叩きこみ同点。試合は2-2の同点で、延長タイブレークに突入した。

 経験豊富な老将は、表の攻撃で動いた。走者一、二塁からのスタート。1死後重盗を仕掛け、捕手の三塁悪送球を誘って1点を勝ち越した。「打つのと、キャッチャーの暴投とどちらが点を取れるのか。僕の頭の中では、捕手の暴投の方が点を取れる可能性が高かったからやらせた」。経験からはじき出した狙い通りの策で、甲子園41勝目が近づいたように見えた。

 ただその裏、2死満塁と勝利へあと1アウトまで近づいたところで、落とし穴が待っていた。捕逸で三塁走者の生還を許し、更にカバーに入った投手への送球がそれて二塁走者まで生還。サヨナラ負けに選手たちはグラウンドに崩れ落ちた。

東邦時代の“鬼の阪口”にも変化「成功も失敗も長い人生にはあるんだから」

 阪口監督はかつて東邦(愛知)で38年間監督を務め、厳しい指導から“鬼の阪口”という異名を背負った。ただ今は「名古屋(東邦)にいたころからサインをたくさん出してきたけど、成功ばっかりじゃない。でも成功も失敗も長い人生にはあるんだから」と選手の成長を温かい目で見守る。

「負けたら反省してチームをつくらないといけないんだけど、良くやったと褒めるだけだよ」。甲子園への思いを問われると「いいところだねえ。また真面目な子たちと、甲子園に来ますよ。いい試合だった。勝たにゃいかんから、残念ではあるけどね」と意気軒高。さらに挑戦を続けていくつもりだ。

 同点弾を打った高橋は、3年間監督と選手として接した祖父から「基本の大切さ」を学んだという。「いかに普段の練習を全力でやるかが大切だと言われています。毎日のように練習に来て一生懸命教えてくれて、この大会で勝って、勝って、いい思いをさせてあげたかった」と目に涙を浮かべた。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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