左翼で肩を回して出番待つエース 重かった序盤の失点、指揮官に感謝の3年間

市和歌山が神村学園に破れ、3回戦進出はならなかった
市和歌山が神村学園に破れ、3回戦進出はならなかった

市和歌山がまさかの11失点で敗退…4人の継投も実らず

 第105回全国高等学校野球選手権記念大会が14日、阪神甲子園球場で行われ、大会9日目第2試合は市和歌山(和歌山)が1-11で神村学園(鹿児島)に破れ、3回戦進出はならなかった。7回から登板したエースの栗谷星翔投手(3年)は悔しい表情を浮かべた。

 市和歌山は今大会1度も登板のなかった川本大輔投手(3年)を先発に指名。しかし、初回から3失点。1イニングを投げ切ることができず、木村壮孜投手(2年)に交代。ただ、木村も4四球を与えるなど制球が定まらず3回途中で降板し、序盤で5点のリードを許した。

 ここまで栗谷と小野莞都投手(3年)の2人の右腕を中心に勝ち上がってきた。初戦も2人継投。だからこそ、半田真一監督は相手の裏をつこうと、川本と木村2人の左腕を起用した意図があった。

 小野を3回途中から起用するも、3イニングで5失点。点差が開いていく状況に監督からレフトを守る栗谷へ、肩をグルグルと回すサインが送られていた。「いつでも投げれるようにしておけ」という無言の合図だった。

 7回途中にやっとエース・栗谷を送り込んだが、前半の失点が重くのしかかった。「最後は栗谷と思っていた。(継投の)判断が後手後手に回った」と反省を口にした。

「栗谷と小野だけでは9回トータルで考えた時に、勝ち上がれないと思っていた」。指揮官は、継投は決して先を見据えた“温存”ではなかったと明かす。この一戦に勝つために、コーチたちと考えた最善の選択だった。

「先発したい思いはあった。でも半田先生が考えて決めたことなので、しっかり受け入れました」最初から投げたい気持ちはあった。それでもチームのため、監督の作戦を信じる気持ちを優先させた。

 最初からエースが投げていたら……。そんな考えも浮かぶかもしれない。それでも継投を選んだ。この決断には、選手と監督の間に芽生えた確かな絆があった。

ベンチから出ていた「肩回せ」のサイン

 実は栗谷は県大会前から肩に違和感を覚え、県大会後は毎日のように鍼治療を行っていた。本人は状態は良いと話すが、栗谷の未来を考えた決断だったのかもしれない。

 それでも市和歌山のエースは栗谷。点差が開いていく状況にベンチからレフトを守る栗谷へ肩をグルグルと回すサインが送られた。「いつでも投げれるようにしておけ」無言の合図だった。7回途中からマウンドに上がると、堂々としたピッチングを見せ3回1失点に抑えた。

「先発したい思いはあった。でも半田先生が考えて決めたことなので、しっかり受け入れました」。胸に秘めていた本音を口にしながらも、信頼する監督の作戦を信じていた。

 どんな状況になっても信じていた。「選手のことを考えてくれる先生です」と、選手と監督の間に築かれた信頼関係を語ってくれた。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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