日本にはない球場での「プレーする楽しみ」 元オリ右腕が感銘受けた子ども向けエリア
米留学中の鈴木優さんが「チェイスフィールド」を訪れた
オリックスと巨人で投手としてプレーし、昨季限りで現役を退いた鈴木優さんは現在、米国に約2年の予定で留学中だ。現地で感じた“ベースボール事情”を、不定期でレポート。第6回の今回は、ダイヤモンドバックスの本拠地、チェイスフィールドを訪れた際の思いを語った。
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今回はアリゾナにあるナショナルリーグ西地区に所属するダイヤモンドバックスの本拠地、チェイスフィールドに行ってきた。ダイヤモンドバックスといえば、オリックス時代に大変お世話になった先輩の平野佳寿さんの在籍したチームだ。平野さんには、高卒1年目で1軍に初めて上がり全く勝手がわからないとき、岸田護さん(オリックス投手コーチ)と共にとても優しくしていただいたのを思い出す。目標であり憧れの先輩だ。
球場は私が住むロサンゼルスから車で6時間ほど走ったところにある。日本でいうと6時間は相当な距離のように感じるが、アメリカに住んでいると行けなく無いなと感じてしまうのだからおもしろい。これも高速道路が無料で走行スピードが日本よりも速いから感じるところなのだろう。
球場の近くにあるパブリックパーキングに駐車し車から降りると、なんと43度と灼熱の暑さ。人が外で活動するのは危険な暑さのなか、球場の外には開場前から長蛇の列ができていた。この日はスターウォーズとのコラボでダイヤモンドバックスのマークが入ったスターウォーズのキャラのスノードームが入場特典でもらえる日だったということもあるが、それでもあの行列はアメリカでの野球人気を感じさせるものだった。
子ども用のアスレチックにティー打撃やストラックアウトも
球場の中へ入ると開閉式の屋根が閉まっており、冷房が効きとても涼しくなっていた。アリゾナの砂漠地帯の暑さでは屋根を開けることはないんじゃ無いかと思ってしまう。チェイスフィールドはアメリカ史上初めて作られた開閉式屋根付きの球場だ。そのためか日本に新しくできた、エスコンフィールド北海道の雰囲気にとても似ているように感じた。
そしてこの球場の名物とも言えるのは、なんといっても右中間にプールとジャグジーに入りながら試合を見られるエリアがあるところだ。ここは「D-backs Pool Suite」というスイートの座席になり、アリゾナの年中通して温暖な気候のため非常に人気があり予約も後を絶たない名物スポットとなっている。35人の団体席ということだが、いつかプールでくつろぎながら試合観戦してみたいと思った。
そのまま球場を回っていると、レフトの上のフロアに子ども用のアスレチックや野球を楽しむことのできるエリアが設置されていた。入ってみるとティーバッティングやスタッフの人がボールを投げてくれて打つことができたり、ストラックアウトのような物がある。その中でも一番驚いたのが、奥のエリアにマシンが置いてあり打つことができるケージがあることだ。球場の中の観客席にバッティングセンターのように打てるところがあるなんて考えもしなかった。子どもが試合を見るだけでなく、プレーして楽しんでもらうことも他球場よりも考えられていた。
球場グルメについては、外が暑いこともあり他のアメリカの球場と比べアイスクリームの売店がとても多く、ホットドッグなどを置いている売店と同じくらいあるのではないかというくらいだ。40度を超える気候で火照った身体に、クーラーの効いた球場で食べるアイスクリームは格別の美味しさだった。ぜひお試しあれ。
野球離れ進み転換期に…子どもたちにどう興味を持ってもらうかが課題
今回のチェイスフィールドで印象に残ったのは、やはり子ども用のエリアだ。今まで見てきたメジャーリーグの球場の中で一番大きく作られており、体験できる種類もたくさんあった。子どもが試合を見にきて、楽しみながら自分もプレーしてみることで野球をしてみたいと思う子どもが増えるのではないかなと勉強させてもらった。
日本の野球界はWBCでの優勝もあり、盛り上がってきているのは間違いないが野球をプレーする人口が減っているのは事実としてある。野球人口が減ることは将来の日本の野球が衰退するのとイコールで、見る人が増えてもプレーする人口が減り国内での質が落ちていけば段々人が離れていくのは必然。
もちろん少子化のなか、子どもの野球人口が少なくなる事実はあるがそのペースよりも早く子どもたちの野球離れが進んでいると感じるので、今転換期を迎えていると思う。そこをどう改善していき、子どもたちにどう興味を持ってもらうかはこれからの日本野球界の大きな課題だ。
(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)