エラー誘発「球場が慶応空間に」 甲子園の左半分が揺れた…応援団が作った“異様な光景”

慶応が107年ぶり2度目の優勝を果たした
慶応が107年ぶり2度目の優勝を果たした

慶応のスタメン発表時から、割れんばかりの拍手が送られた

 試合開始前から、甲子園には異様な雰囲気が漂っていた。第105回全国高校野球選手権は23日に決勝戦が行われ、慶応(神奈川)が8-2で仙台育英(宮城)を破り、107年ぶり2度目の優勝を果たした。慶応を後押ししたのが、三塁アルプス席はもちろん左翼スタンド、バックネットまで押し寄せたOBらからの大応援だった。

 三塁アルプスは、試合開始30分前にはほぼ満員の状態。慶応を応援するOBらでぎっしりと埋まり、慶応ナインの一挙手一投足に大きな拍手が送られた。ノック中にスタメンが発表されると、1人名前が呼ばれるたびに場内がどっと沸いた。

 1番の丸田湊斗外野手(3年)が、決勝戦では初となる先頭打者弾を放っていきなり得点すると、三塁内野席から左翼スタンドにかけて、観客が肩を組み横に揺れながら「若き血」を合唱。甲子園の客席の左半分が揺れ動く異様な光景だった。仙台育英の須江航監督は「丸田くんの本塁打が大勢を決めたというか、球場の雰囲気も慶応空間になった」と振り返る。

王者の痛恨ミスを誘った圧倒的な声量「応援で声が聞こえなかった」

 その後も、息の合った手拍子と、途切れることなく移り変わる応援歌が選手たちの背中を押した。5回には丸田が左中間に打ち上げたフライを、左翼手・鈴木拓斗(2年)と中堅手・橋本航河(3年)がぶつかる形で落球。橋本は「思っていた通り、応援は大きかった。(落球は)応援で声が聞こえなかった」と唇を噛んだ。

 夏の頂点に立つと、スタンドと一体になって塾歌を合唱。空には「慶応」の三唱がこれでもかとこだました。その後、慶応ナインはアルプスだけではなく、左翼席に向かっても一礼。森林貴彦監督は「応援の後押しもあって勝たせてもらった」と感謝した。

 適時打を含む2安打を放った八木陽内野手(3年)も「人生で初めての大声援。凄いなと思いましたし、力になってくれた」とあまりの声援に目を見開いた。OBたちも待ちわびた、107年ぶりの悲願――。耳をふさぎたくなるほどの圧倒的な応援が、優勝を後押ししたのは間違いない。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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