「狙い球もクソもないっすね」 “天敵”撃ちV打…巨人・岡本和真が見せた執念
「伊藤くんは…同い年なのですが、伊藤くんとか言ってしまって」
■巨人 4ー2 阪神(27日・東京ドーム)
巨人は27日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に4-2で逆転勝ち。相手の先発で“天敵”の左腕・伊藤将司投手を攻略した。2-2の同点で迎えた8回2死一、二塁の好機に、伊藤将と同学年の4番・岡本和真内野手が左前へ決勝適時打を放ち、ケリをつけた。辛くも本拠地での阪神戦6連敗を回避し、今季対戦成績は5勝14敗1分(残り5試合)に。まだまだ“借り”は返し足りない。
「僕自身、伊藤くんは……同い年なのですが、伊藤くんとか言ってしまって……まあ、伊藤はいい投手ですし、打てていなかったので、なんとか打ててよかったと思います」。試合後、報道陣に囲まれた岡本和は、普段通りのほんわかムードの受け答えで、笑いを誘っていた。
それでも打席では内心、ふつふつと沸き上がるものがあったのではないか。と言うのも巨人は伊藤将に対し、昨年は2完封を含め3戦3敗。今季も試合前の時点で、1完封を含む2戦2敗、計16イニングで1点も取れていなかったのだ。足かけ2年で5連敗中の伊藤将に、岡本和自身も6打数無安打3三振とからきしだった。
巨人はこの日も、5回までは無得点に抑えられ、二塁さえ踏めていなかった。しかし0-2とリードされて迎えた6回、先頭の代打・大城卓三捕手がバックスクリーンへ15号ソロ。2死後に坂本勇人内野手も左中間へ15号ソロを放ち、1発攻勢で同点に追いついた。
そして同点のまま迎えた8回、2死一、二塁で、「ずっとやられていたので、なんとか俺に回してくれと思っていた」と言う岡本和が打席に立った。それまでの3打席は無安打1三振だったが、よほど期するものがあったのだろう。初球と2球目は速球で内角をえぐられ、カウント0-2と追い込まれるも、ボール球を2球見送った後、真ん中やや外寄りに甘く来た143キロ速球を一閃。打球は三遊間を抜けていった。
「全部の球種でストライクを取れますし、全部で打者を誘うこともできる」
二塁走者の門脇誠内野手が俊足を飛ばして三塁を蹴り、阪神の左翼シェルドン・ノイジー外野手のワンバウンド送球をかいくぐるようにして、ヘッドスライディングで決勝のホームイン。その瞬間、岡本和は一塁ベース上で右拳を突き上げた。感情を爆発させることの少ない岡本和にしては、派手めのアクションに見えたが、お立ち台で「かなり激しいガッツポーズでしたね?」と水を向けられた時には、「いや、そんなことはないと思います」とクールに返答。スタンドの笑いを誘ったのだった。
奈良・智弁学園高から2014年ドラフト1位で巨人入りし、9年目を迎えている岡本和に対し、伊藤将は神奈川・横浜高、国際武道大、JR東日本を経由して阪神入りし、プロ経験はまだ3年目。それでも先発ローテの一角として安定した投球を続け、特に昨年と今年、巨人戦には滅法強い。
岡本和は伊藤将の特長を「めちゃくちゃコントロールがいいし、器用なのだと思います。カットボールもストレートもシンカーもチェンジアップも、全部でストライクを取れますし、全部で打者を誘うこともできる」と評する。その伊藤将に2ストライクを取られ、あらゆる球種を想定しなければならない状況で放った殊勲打。岡本和は「狙い球もクソもないっすね。何とか打とうという気持ちだけでした」と表現した。
優勝マジックが点灯している阪神に対し、巨人は現在4位で、クライマックスシリーズ進出圏内のAクラス入りを当面の目標としている状況。今季残りの阪神戦5試合は全て敵地となるが、岡本和は「やられてばかりではいけない。甲子園で対戦が残っているので、勝てるように頑張りたい」と思いを新たにした。“伝統の一戦”らしいところを見せなくてはならない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)