オリ育成出身右腕の“思わぬ悩み” 直近10戦の防御率0.83に「めっちゃ嫌だった」

オリックス・東晃平【写真:矢口亨】
オリックス・東晃平【写真:矢口亨】

オリックス東晃平「強力打線を信じています」

■オリックス 5ー2 ロッテ(27日・京セラドーム)

 高鳴る鼓動を必死に抑えた。オリックスの東晃平投手は27日、本拠地で行われたロッテ戦に先発登板し、6回途中4安打2失点の粘投で今季3勝目を挙げた。初回に1点を失ったが「どこが悪いか、すぐに分かったので修正しやすかった」と2回から4回は3者凡退に封じて、攻撃のリズムを作った。

 黙々と下積みを重ねてきた男が、今季初のお立ち台で輝いた。中川圭、森、頓宮らと4人でヒーローインタビューを受け「強力打線を信じています」と照れた。試合は3時間ピッタリで終了。先発登板日、食事が喉を通らないという東はマウンドでの“空腹”にも耐えた。

 試合後に浮かべた安堵の表情が物語った。勝ち投手になり「ホッとしています」と心境を吐露する。チームは2度の引き分けを挟んで8連勝。ここ10試合で投手陣は計98イニングで9失点の防御率0.83を記録。東は登板前に「みんなが凄すぎて、めっちゃ嫌ですね……」と本音を前に出した。

 少し冗談めいて「誰かがスコーンと行かれれば(気持ちは)楽なんですけど……。チームとして、そういう訳にはいかないので」と気持ちを強く持った。2017年の育成ドラフト2位でプロの世界に入った東は、当時から体重が20キロ増えて、90キロになった。「自然に大きくなった感じです。筋トレの成果ですね」。少食だったが、茶碗のサイズも大きくした“結晶”が球速アップにもつながっている。

 この日に投じた1球目は154キロを計測。「球速が安定するようになった。体が大きくなったのが、効果あったのかなと」と手応えを感じている。初球を投じるとドキドキの緊張感は吹き飛ぶようで、「(1軍マウンドに)少しずつ慣れてきました。だけど、投げる日(先発日)はあんまりご飯を食べられないです。投げ終わった後に、ようやく食べられるようになりますね」。鍛えて大きくなった胸筋で、バクバクの心臓を抑えている。

 育成選手として2軍戦のローテーションを守り、アピールを重ねた。高卒5年目だった昨季7月28日に支配下選手登録されると、30日の敵地・ロッテ戦でプロ初登板初先発。当日は緊張感を表情に出さずも「初球、バックネットに思い切り(暴投で)突き刺したら、楽になるのかな……」と口にしたことも、良い思い出だ。

東の心境…「由伸さんを筆頭に、みんな成績が良すぎて、基準がわからない」

 心拍数が上がり、汗いっぱいのマウンドで落ち着きを保つのはロジン。ポンポンと“相棒”を右手に乗せると、モクモク上がる白い粉が濃緑「夏の陣」ユニホームを纏う。「健矢さん(若月)に言われたんですけど(力を)調整せずに、1人1人全力で。先のことを考えずに」。初回に2本の安打と四球が絡み1点を失うも、1死一、二塁から安田を二併殺に打ち取った。

 イニング間に捕手の若月から「真っすぐがシュートしていたので、変化球多めでいこう」と助言をもらい「修正ポイントが分かりやすかったので落ち着けた」と立て直した。5回1死一、二塁のピンチでは小川を11球目の直球で空振り三振、続く藤原を10球目のシュートで空振り三振に仕留め、グラブを大きく叩いた。

 自己最多の108球に、自信もついた。試合中のマウンドでは、宗、頓宮、若月が順番に声を掛けられ「打たれてないから。落ち着いて投げろと言われて、そうだなと思えた」と感謝した。これで3勝0敗、防御率2.33と安定感を見せる。

 それでも“悩み”がある。「由伸さん(山本)を筆頭に、みんな成績が良すぎて、基準がわからないんです。勝敗が(5勝5敗など)タイの投手がいない。勝ち越す投手ばかりで(失点は)ゼロばかり。投げるまでは考えてしまいます……」。はっきりと打ち明けた育成出身右腕は、しっかりと勝利のバトンを繋いだ。

 投球を見守った中嶋監督も「元々、持っているものを(2軍で)見た時に、すごく綺麗なフォームで。ちょっと荒々しさが欲しかった。ちょっと出てきたのかなと思います」と成長を評価する。破竹の8連勝で貯金を今季最多の28。2位ロッテとのゲーム差を10.5に広げ、優勝マジックは22となった。東が赤裸々に話した“不安”は、悩ましいことではない。高レベルの競争が、好結果につながっている証だった。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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