大谷翔平の後ろを打つ心境とは? 移籍1年目…ドルーリーが笑顔で語った“重圧”
今季加入したドルーリー…トラウト離脱、大谷の靱帯損傷も「戦わないといけない」
今季両リーグトップの18度の申告敬遠を受けているエンゼルス・大谷翔平投手の“次の打者”には大きな重圧がのしかかる。マイク・トラウト外野手の離脱でその役割を担うのは今季加入したブランドン・ドルーリー内野手。普段は寡黙な男だが、「楽しんで打っているよ」。自分と勝負されることをチャンスと考えている。
グラウンドではあまり笑顔を見せず、本塁打を放っても表情を変えずにダイヤモンドを1周する。試合前にはスターバックスでコーヒーを買い、1人の時間を楽しむ。アーリーワークでは黙々と右方向へ打球を飛ばす。一方で、試合前のキャッチボールでは、捕手を座らせ投球練習。お茶目にカーブやチェンジアップなどを試す。その時は満面の笑みだ。
今季から加入した31歳。ベテランの域に入るが、これまでに2度DFAを経験し、7球団を渡り歩いた苦労人だ。昨年にレッズとパドレスの2球団で打率.263、28本塁打、87打点の成績を収め、シルバースラッガー賞を受賞。9年ぶりのプレーオフ進出を目指すエンゼルスと2年1700万ドル(約24億9000万円)で契約した。
チームは7月後半から大失速。自身も7月初旬に左肩痛で負傷者リスト入りした。チームはそのすぐ後にトラウトも離脱し、一気にプレーオフ争いから後れを取った。「タフだね。怪我人が多く出ている。とにかく頑張って戦わないといけない。シーズンは1か月以上残っているから、戦っていくしかない」。淡々と話しつつも悔しさをにじませる。
21日に誕生日もハリケーンで試合が中止に…記者の後日の祝福「ノープロブレム」
一方で自身の打撃には手応えもある。「感覚はいいよ。つねに成長の余地はあるものだとは思うけど、感触としては(今季の成績は)手堅いところかな」と自信も見せる。打順は3番から8番を経験し、守備でも二塁、一塁をこなすユーティリティ。「(打順は)特に気にしないかな、あまり関係ないと思う」とやるべきことを理解する。
8月からは主に大谷の後ろを打つ。大谷は現在、出塁率リーグトップの.412だが、「よく出塁するからいいことだね。プレッシャーと言うわけではないかな」とむしろ楽しみにしている。「走者が出ている時に打つこと、そして彼ら(走者)を本塁に返すチャンスを生むのはいいことだと思う」。覚悟はできている。
21日に31歳の誕生日を迎えた。奇しくもその日は、ハリケーンの影響で試合が中止になったが、その前後で3戦連続アーチをかけた。記者が「おめでとう。当日に祝えなくてごめんなさい」と伝えると、「ノープロブレム。ありがとう。うれしいよ」。珍しく満面の笑みで答えてくれた。言葉数は少ないが、内に秘める熱い思いは強い。
著者プロフィール
○川村虎大(かわむら・こだい)1998年2月、茨城・土浦市出身。土浦一高から早大に進学。早大では軟式庭球部に所属するかたわら、ソフトテニス専門誌に寄稿。2021年からFull-Countに所属し、2023年は第5回WBCを取材。その後、エンゼルスを中心にMLBを取材している。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)