滑ったバットが呼んだ“奇跡” 豪雨で生まれた国際交流…神対応に見えた主将の自覚
侍U-18代表、主将の小林隼翔が見せた思いやり
心温まる気遣いが、雨雲が集まった台北を晴れやかにした。高校日本代表「侍ジャパン」は2日、台湾(台北)で行われている「第31回 WBSC U-18 ベースボールワールドカップ」でパナマと対戦し、7-0で勝利した。主将を務める小林隼翔内野手(広陵)は「2番・遊撃」でスタメン出場し、4打数4安打4打点の大活躍を見せた。
執念で3本の内野安打をもぎ取った後、6回2死満塁の第4打席では右翼へ適時三塁打を放ち、快音を響かせた。ただ、それ以上に球場を盛り上げたのは、降雨の中での“神対応”だったかもしれない。
5回2死の守備。遊撃を守る小林に向かって飛んできたのは白球ではなくバットだった。パナマの8番・ゴンサレスの振ったバットは、雨の影響で手元が滑ってショート定位置まで飛んだ。小林がすぐに拾って、打席まで小走りで向かい、手渡した。その姿勢に、球場は温かい拍手で包まれた。
小林はバットが飛んだ瞬間を思い返し「ビックリしましたね」とニッコリ。相手は神妙な表情でバットを受け取り「一塁のベースコーチャーがこうやって(サムアップ)やってくれて、サンキューと言ってくれました」と思いやりが通じた様子だった。
一言の大切さを知っている。小林は指揮官から届いた1本の電話が忘れられない。侍U-18代表に選出された時、馬淵監督から「主将を頼んだ」と連絡をもらった。電話越しの声を「やっぱり、覚えていますね。自分がしっかりまとめてやっていけたらなと思います」と力に変える。
2連勝で勢いに乗り、3日は米国代表と激突。「すごく楽しみ。日本の野球はどう通用するのか、どれだけ自分たちが証明できるか」。挑戦者は、土砂降りでも、ずぶ濡れでも関係ない。悲願の世界一へ、歩みを止めない。