投手起用は「割り切り」か「精神論」か 野手登板で賛否…時代で変わる“野球観と葛藤”
巨人は2日のDeNA戦で8回から野手の北村をマウンドに送る
野手登板は悪なのか? 2日に横浜スタジアムで行われた巨人対DeNAの一戦。巨人は、8点リードされた8回に、北村拓己内野手をマウンドに送り、ファンの間で賛否両論が巻き起こった。メジャーリーグの解説も務める新井宏昌氏は、「どちらの考えもあるが、日本には最後まで諦めない精神論があるのではないでしょうか」と、分析した。
8点ビハインドと劣勢の展開。原辰徳監督は菊地大稀投手に変わり、8番手として内野手登録の北村をマウンドへ送った。1死から山本にソロを浴びたが、1イニングを1安打1失点で凌ぎ役割を果たした。メジャーではよく見られる光景だったが、SNS上では「試合を諦めた」「相手に失礼」と否定的な意見もあった。
この時点で、巨人のブルペンには中川皓太とアルベルト・バルドナードの2投手しか残っていなかった。大量リードされた場面で、勝ちパターンをつぎ込むのは避けたいところ。新井氏も「個人としては悪いことだとは思わない。ペナントはリーグ戦でトーナメントではない。翌日、その先を見据えて選手起用をしていく。(大差の)そういった場面になったことは反省しないといけないが、野手を投げさせることに反省はない」と口にする。
巨人という伝統球団がゆえ野手登板への反響は大きい。ソフトバンク時代に、王監督の元で1軍打撃コーチを務めた際には「巨人の現役時代は勝利を宿命づけられた人。負けることを一番に嫌い、最後まで諦めない野球をする人だった」と、勝ちへの執着を肌で感じたという。
中日は8月25日のDeNA戦で9回に左腕・近藤が登板も1イニング62球、8安打10失点
それでも、野球界も時代と共に変化を見せている。「負けることが許されないチームが、野手登板である意味負けを認めたともいえる。巨人も少しずつ変わってきている」。投手分業制が主流となり、連投や球数に首脳陣は気をつかう場面が多くなっている。
一方で、野手登板以外にも投手起用に賛否が起こる場面はあった。8月25日の中日-DeNA戦では、中日が2-8とリードされた9回に左腕・近藤が1イニングで62球を投げ、8安打5四死球10失点。滅多打ちを食らっても投手を変えなかった立浪監督へ批判が集中し、“晒し投げ”とも言われる事態になった。
「これも勝ちパターンの投手を使いたくない場面。1イニングで60球は酷かもしれないが、そのあとの首脳陣のフォローが大事だと思います。立浪監督に野手を投げさせる考えがあったかは分からないですが、監督の考え方は対照的だったのではないでしょうか。原監督は“割り切った”、立浪監督はそうじゃなかった。指導者にはそれぞれの野球観があり、葛藤がある」
巨人は翌3日の試合では、先発・井上が2回途中7失点で降板も、計7投手の継投で逆転勝ちを収めた。ちなみに前日に“温存”したバルドナードは、7回から登板し2回無失点、中川は9回から登板して1回無失点。前者には勝利が、後者にはセーブが記録された。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)