「踏み台にしてNPBに行く強い気持ちが必要」 独立リーグ監督就任の元オリ左腕が抱く夢
2024年から「さわかみ関西独立リーグ」に参戦する姫路イーグレッターズの監督に就任
現役引退後も忙しい1年を送っているのが、昨年までオリックスでプレーした海田智行氏だ。京セラドームで古巣の解説を務め、プロ入り前に所属していた社会人野球・日本生命では臨時コーチとして指導。さらに2024年からは、「さわかみ関西独立リーグ」に参戦する姫路イーグレッターズの監督に就任する。
「めちゃくちゃ元気で、おかげさまで毎日忙しくさせてもらってます。選手時代とはまた違った緊張感のなかで仕事をするので面白い」
海田氏は戦力外を受けた昨オフに、一度は現役続行を目指した。12球団合同トライアウトに参加するもオファーなく現役引退を決意。恩師・岡田彰布氏(オリックス監督時代の2011年ドラフトで海田氏を4位で指名)が新監督を務める阪神から打撃投手の打診を受けたが、悩んだ末に断り、指導者の道を選択した。
中学クラブチーム、社会人野球の名門でコーチとして経験を積み、来年は独立リーグの監督。順調に指導者としてスキルアップしている。引退後、真っ先に頭に浮かんだのがアマチュア指導だった。子どもたちには野球の楽しさ、プロを目指す大学、社会人には自らの経験を惜しみなく伝え“夢”への後押しを行う。
スカウト&スポンサー集めも行う「楽しみが大きい。誰もができることじゃない」
監督業は、今年6月から既に始まっている。姫路のチームは来季からの参入が決まっているものの、選手はゼロ。関西近郊の大学などに挨拶回りをし、すでに第1回トライアウトを開催。チーム運営の資金源となるスポンサー集めも、球団代表と共に行っている。
選手のスカウト、球団運営などに奔走する日々にも「楽しみの方が大きい。誰もができることじゃない」とやりがいを感じている。姫路の土地柄にも好印象を抱いており「情に厚いというか、人と人のつながりが強い。こちらの思いを真剣にぶつけて地元密着のチームを作りたい」。NPB入りを夢見る選手同様に、熱い思いを持ちながらチームを成長させていく。
「野球をやりながらお金を稼ぐ、というよりはここ(チーム)を踏み台にしてNPBにいく強い気持ちを持っていないと夢は叶えられない。プロは甘くない世界ですが、一人でも多くの選手をNPBに送り出すことができれば。その力になりたい」
古巣・オリックスはパ・リーグでは21世紀初となるリーグ3連覇を果たした。エース・山本由伸を中心にした若手投手の台頭、中嶋聡監督が選手の好不調を見極め起用する“猫の目打線”。昨年は選手として、今年は解説者としてオリックスの強さを知る男は「理想的なチーム」と目を細める。海田監督の挑戦はまだ始まったばかりだ。
○著者プロフィール
橋本健吾(はしもと・けんご)
1984年6月、兵庫県生まれ。報徳学園時代は「2番・左翼」として2002年は選抜優勝を経験。立命大では準硬式野球部に入り主将、4年時には日本代表に選出される。製薬会社を経て報知新聞社に入社しアマ野球、オリックス、阪神を担当。2018年からFull-Countに所属。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)