「ドキッとしましたが…」 松井監督が称賛した26歳外野手の“積極タッチアップ”
「もちろん僕の足だったら行ってますけど」
■西武 4ー2 ソフトバンク(14日・ベルーナドーム)
今季の西武外野陣は、フレッシュな若手が台頭した一方で、またもや不動のレギュラーと呼べる選手は現れなかった。「どんぐりの背比べ」との声も上がる中、14日に本拠地ベルーナドームで行われたソフトバンク戦では、「7番・左翼」でスタメン出場した岸潤一郎外野手、「8番・中堅」の愛斗外野手が活躍し、4-2で勝利を収めた。レギュラーシーズン残り16試合(14日現在、以下同)で、来季へ向けてどれだけアピールできるか。
岸の働きには、いぶし銀の趣があった。2回1死一、二塁での第1打席に、ソフトバンク先発・森唯斗投手のカットボールをしぶとく右前へ弾き返し満塁に。続く愛斗はすかさず右中間へ先制犠飛を打ち上げた。三塁走者のデビッド・マキノン内野手が悠々ホームを駆け抜け、二塁走者も三塁へ進んだが、意外だったのは、一塁走者の岸までもが、右翼・柳田悠岐外野手の捕球体勢を見て、ハーフウェイから一塁ベースへ戻り、改めてタッチアップからスタートを切ったことだった。微妙なタイミングとなったが、岸はヘッドスライディングで見事に二塁を陥れた。
松井稼頭央監督は「ドキッとしましたが、相手の隙を突いて、よく二塁に行ってくれました。好走塁だったと思います」と称え、「もちろん、僕の(現役時代の)足だったら行ってますけど」と付け加えて笑わせた。この岸の走塁が、続く古賀悠斗捕手の2点二塁打につながった。
岸自身はスリリングな走塁を「柳田さんの捕り方が、送球しづらい体勢だったので、僕は行けると思いました」と説明。西武は今季から、現役時代に盗塁王に3度輝いた松井監督の下で「走魂」をチームスローガンとして掲げ、機動力野球に舵を切ったが、4年目の岸は「先の塁を狙う意識は常に持っています。走塁の意識の高さは、今季からと言うより、ライオンズにずっとあるものだと思います」と強調した。
西川、ドラ1蛭間、ペイトン、鈴木、長谷川、若林ら多士済々
7回の追加点も、岸と愛斗がキーになった。1死から佐藤龍世内野手が左前打で出塁すると、続く岸は初球を一塁手の前へプッシュ気味にセーフティバント。一塁は間一髪アウトとなったが、佐藤龍を得点圏に進めた。「岸が自分で考えてやったことです」と松井監督が称えたアイデアだった。
ここで愛斗が左中間を破る適時二塁打を放ち、森をマウンドから引きずりおろす。カウント1-1から低めのツーシームを振り抜いた一打に、松井監督は「愛斗らしい打撃をしてくれました。あの1点は非常に大きかったと思います。これで(今年6月30日に発売された)愛斗弁当も売り切れになってほしいですね」。珍しくジョークを連発したほど、2人の外野手の働きを喜んでいた。
西武の外野陣は、岸と愛斗の他にも、24歳で攻守に成長著しい西川愛也外野手、最近3番に定着しつつあるドラフト1位ルーキー・蛭間拓哉外野手、9月の月間打率が.345(14日現在)のマーク・ペイトン外野手ら多士済々。2軍にも鈴木将平外野手、長谷川信哉内野手、若林楽人外野手らが控えている。
1軍で活躍したことのある有力選手は数多いが、誰もレギュラーになり切れていないのが現状。来季以降“稼頭央政権”を長く支えるような外野手に、そろそろ出てきてほしいところだ。