指名漏れも「悔しがっている暇はない」 2度目のドラフトへ…度会隆輝が歩んだ3年間
横浜高3年時にプロ志望届を出すも指名はなく社会人の強豪ENEOSに進んだ
2023年のプロ野球ドラフト会議まで、ついに1か月を切った。野手の目玉の1人といえるのが、ENEOSの度会隆輝外野手だ。横浜高時代には指名漏れを経験。一回りも二回りも大きくなって解禁イヤーを迎え、再び運命の時を待つ。
元ヤクルトの度会博文氏を父に持ち、中学3年時には日の丸を背負って「U15アジアチャレンジマッチ2017」に出場し、最優秀選手賞を受賞。人気テレビ番組のトスバッティング企画で、番組史上初の完全制覇を成し遂げ話題となったこともあった。名門・横浜高では入学直後からベンチ入りし、1年夏から甲子園に出場するなど“エリート街道”を歩んできたかのように見えた。しかし高校3年時、プロ志望届を提出するも指名はなかった。
「ドラフトの時はもちろん悔しさはありましたけど、当日以外は悔しさはなかったです。悔しがっている暇はなかったので、すぐに切り替えて前向きにやっていこうとずっと思っていました」
18歳にして味わった感情を、度会はそう振り返る。「どこがとかではなく、走攻守全てで甘かったと思います」。社会人の強豪・ENEOSに進んですぐにレギュラーを掴み、定評のあった打撃だけでなく、全ての面でレベルアップに励んできた。
昨夏の都市対抗では、橋戸賞(MVP)、若獅子賞(新人賞=3人選出)、打撃賞と野手では史上初の“3冠”を達成する大活躍で、ENEOSを史上最多12度目の優勝に導き、一気に評価を上げた。
「『度会は走攻守全てで成長したな』と思ってもらえるように」
それでもおごることなく、冬場は走り込みを徹底。4秒台前半だった一塁到達タイムは3秒93まで上がり「スピードもついてきたかなと思います」と胸を張る。もちろん、持ち前のミート力、パワーは「限界はないと思う」と磨きをかけ続けた。
ドラフト解禁となる今年は、都市対抗でまさかの2試合計9打数1安打と力を発揮できず、2連覇どころか2回戦敗退。普段は「天真爛漫」という言葉がぴったりで笑顔が印象的な度会が、大粒の涙を流して「期待に応えられなくて悔しいです」と繰り返した。
「昨年はずっと楽しんで思い切ったプレーができていたんですけど、今年は『やってやるぞ』とか『いいところを見せる、ここで決めてやる』という気持ちが強くて、気負いや力みが生じてしまったと思います。そこで結果が出せないのは自分の技術不足です」と見えない重圧とも戦っていたことも明かしたが、ここでぶつかった壁も、度会ならきっと乗り越えていくだろう。
「高校の時の自分よりはるかに成長してやるという気持ちでENEOSに入って、2年半やってきました。もっと成長してもっと頑張って、『度会は走攻守全てで成長したな』と思ってもらえるように、今後もやっていきたいと思います」
10月4日に21歳の誕生日を迎える若武者は、ムードメーカーだった父親に似たのか、趣味は歌とモノマネだという。持ち前の明るさと、逆境にも負けない強さでまだまだ成長していくだろう。10月26日。3年越しの思いを結実させ、度会は今度こそ、トレードマークの笑顔を輝かせているのだろうか。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)