松田宣浩は「誰もここまでやるとは」 40歳まで現役全う…泥まみれの18年前の記憶

引退会見を行った巨人・松田宣浩(中央)【写真:小林靖】
引退会見を行った巨人・松田宣浩(中央)【写真:小林靖】

松田の入団時、エースだった斉藤和巳コーチ、第一印象は「大丈夫?」

 心配してしまうほどの第一印象だったから、今でも忘れられない。巨人は28日、松田宣浩内野手の現役引退を発表した。ソフトバンクの斉藤和巳投手コーチは、この日の朝に電話で報告を受けたという。現役時代に2度の沢村賞に輝いた斉藤和コーチは、18年前の松田の新人時代を見て「大丈夫? って思った」と話す。

 松田は、2005年の希望枠でソフトバンクに入団した。当時チームの“絶対エース”だった斉藤和コーチは、ルーキー松田の第一印象を「大丈夫? って思った。守備を見ても、打つ方を見ても。大して、バッティング練習も前に飛んでないし」と苦笑いで振り返る。

 エースが心配すらした新人を変えたのが、1軍の内野守備走塁コーチを務めていた森脇浩司さんとの出会いだった。斉藤和コーチも「送球は安定していたけど、守備練習を見てもなかなかうまく取れない。そこで森脇さんのノックをね、毎日のように受けてうまくなった」と、泥にまみれて白球を追う姿を覚えている。その中でも、森脇さんが松田を褒めた言葉が、忘れられないと話す。

「野球っていう能力よりも一生懸命やる能力。それは1年目からあったので。森脇さんと1回、その話になったことがあるかな。『この姿いいやろ』って森脇さんも言っていたし。そうですよね、可能性感じますよねって話はしたかな。下手くそは下手くそやったけどね」

新人時代の姿を思うと「ここまでやるとは誰も思っていなかった」

 周囲に「大丈夫か?」と思わせてしまうほど、当時は技術がなかったかもしれない。だからこそ、誰よりも野球と向き合い続けてきた。通算1921試合に出場するほどの選手になれたのも、そんな実直さがあったからだ。

 数々の選手を目にしてきた斉藤和コーチも「結局、そういう選手がこうやって残っていくんやなって思う」とうなずく。熱男の原点がそこにはあった。

「頑張った全てが結果に結びつくわけじゃないけど、結果に結びついた時の自信というのは、中途半端にやっている人よりもかなり大きなものがあるんかな。頑張って、何かを掴んだ人は離さへんなっていう。これはマッチだけじゃなくてムネ(川崎宗則さん)もそうやしね。ただがむしゃらに、無我夢中に、バカになれる人って強いなって、そういう人を見てつくづく思いますね」

 侍ジャパンのユニホームに袖を通し、ファンからも愛された熱男の存在。新人時代を知る1人として、斉藤和コーチは言う。「多分、彼の若い頃を知っている人、一緒にプレーした人からすると、ここまでやるとは誰も思っていなかった」。もちろん、松田の努力と実直さに対する、最上級のリスペクトだった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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