高校は控えも…プロ注目の153キロ二刀流に 「本当にお前?」劇的進化の21歳右腕

太成学院大・田中大聖【写真:湯山慶祐】
太成学院大・田中大聖【写真:湯山慶祐】

太成学院大・田中大聖は投手で最速153キロ、打撃で通算6本塁打の二刀流

 近畿学生野球連盟の2部リーグからプロ入りを目指す“二刀流”がいる。最速153キロの直球を投げ、打っては大学通算6本塁打を誇る太成学院大・田中大聖投手だ。プロスカウトも注目する“ポテンシャルお化け”は「最後の秋は後悔しないように頑張りたい」と、運命の時を心待ちにしている。

 高校時代は山形の強豪・鶴岡東でプレー。3年夏に甲子園に出場したが、背番号「18」の控え投手で登板機会はなかった。同級生や他校のレベルの高さを痛感し「野球は高校で終わり。甲子園に出たことで尚更。自分は試合にも出ていない。周りの選手たちに圧倒された」と、一度は野球人生に終止符を打った。

 いくつかの地方大学から誘いはあったが、理学療法士を目指すため専門学校に行くことを両親に相談。上のレベルでスポーツを続ける選手たちのサポート役を目指していたが「野球をやるのは今しかない」と説得を受け、野球続行を決断。

 楽しそうに野球を続ける高校の先輩からも誘いを受け、自宅からも通える太成学院大に進学した。近畿学生野球連盟の2部リーグに所属する同大はお世辞にも知名度があるとはいえない。専用グラウンドもなく、練習場は女子ソフトボール部と共用。多くのプロを輩出する関西学生リーグに比べると環境面でも大きく劣る。それでも、田中は野球ができる喜びを感じていた。

「ただ、楽しく野球やりたい。勝ち負けじゃなく、僕自身はこれまで試合に出ていなかったし、野球をやってない。最後は気持ちよく終わりたかった。だから、1年生から試合に出られるのは本当に嬉しかった。本当に楽しくて『野球ってこうだったな』と、改めて感じた。野球を始めた初心に戻ることができました」

太成学院大・田中大聖【写真:湯山慶祐】
太成学院大・田中大聖【写真:湯山慶祐】

関西のスカウトも高評価「素材は抜群。大化けする可能性は十分」

 転機となったのは入学早々に訪れた“コロナ禍”だった。大学も自粛となり練習もできない。そんな中、唯一空いていたのがスポーツジム。それまで本格的に体を鍛えたこともなく、筋トレの知識もなかったが「家にいても寝るだけ。とりあえず外に出たかった」と、毎日ジムに通うことにした。

 独学でベンチプレス、スクワットなど肉体を強化する中、たまたまジムでボディビルダーに出会う。野球好きの“マッチョマン”から専門的なトレーニング法を教わり、体重は高校時代の77キロから96キロまで増量。「俊敏性を失いたくないので、徐々に体重を増やして今がベスト。走る部分は投打ともに必要」。50mは6秒ジャストで駆け抜ける。

 昨秋のリーグ戦では10試合で打率.292、4本塁打9盗塁の活躍を見せたが、今春は長打警戒の極端なシフトを敷かれるなど徹底マークにあい10試合で打率.107、0本塁打と苦しんだ。投手としては150キロを超える直球とカットボール、フォーク、カーブを武器に、今春までに通算9試合に登板し3勝1敗、防御率1.63の成績を残した。

 粗削りながら投打で高いポテンシャルを見せる二刀流に、関西のプロスカウトも「素材は抜群。プロの練習をこなしていけば大化けする可能性は十分。投打に加えて足もある」と評価。今秋のリーグ戦でも各球団のスカウトが足を運び、その一挙手一投足をチェックしている。

 控えだった高校時代から一躍ドラフト候補になり、高校時代を知る仲間からは「本当にお前なの?」「何があったんだ?」と連絡が来るという。運命のドラフト会議は10月26日。残り1か月を切った。「自分のなかで初めてで、分からないことだらけ。最後の秋は楽しく仲間と共に最高の成績を残して、悔いのない野球人生を送りたい」。埋もれていた超逸材の二刀流が夢の扉を叩く。

【実際の動画】スカウトも評価する“ポテンシャルお化け” ドラフト候補の太成学院大・田中の練習に密着

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