大谷翔平の新天地はやはりドジャースか 二刀流復活の鍵を握る2人の“恩人”
来季は開幕から打者に専念、二刀流復活は2025年シーズン
エンゼルス・大谷翔平投手の“新天地”はドジャースなのか。今オフにフリーエージェント(FA)となる二刀流の去就騒動を語る上で、常に最有力候補に挙がっているが、右肘手術からの復活を目指す今、やはり移籍先として間違いないように見える。毎年ワールドシリーズを狙えるチームであることや、新契約にかかるメジャー史上最高額5億ドル(約750億円)とも言われる資金面、そしてロサンゼルスの温暖な環境……。それだけではない。苦闘を支えてくれた2人の“恩人”の存在だ。
二刀流・大谷の“恩人”とは、ドジャースのチームドクターを務めるニール・エラトロッシュ医師と理学療法士のバーナード・リー氏。エラトロッシュ医師は9月の右肘靱帯の手術だけでなく、前回2018年10月の右肘トミー・ジョン手術も担当。同手術のパイオニア、フランク・ジョーブ博士の愛弟子で、米国スポーツ界を代表する名医だ。
リー氏はエンゼルスの理学療法士として10シーズン在籍。大谷が2018年10月に右肘のトミー・ジョン手術、2019年9月に左膝の手術を受けた際は、パフォーマンス・ディレクター兼理学療法士として、二刀流の長いリハビリ生活を支えた。しかも、2020年12月のウインター・ミーティングではプロ投手の靱帯に関する研究で「最優秀調査賞」を受賞した経歴を持つ、いわば“靱帯のスペシャリスト”だ。
9勝&46本塁打でMVP受賞が確実視されていた2021年11月15日に、都内の日本記者クラブで行った会見。大谷は医療スタッフへの感謝の言葉を口にしている。「怪我をしていたので、精神的にきつい場面もありました。それでも必ず投げられると思って、執刀してくれたお医者さんもそうですし、毎日付き添ってくれたトレーナーもそうです。必ず良くなると思ってやってきた。不安はありましたけど、焦りはなかったです」。開口一番に語ったことからも、その感謝の度合いが伝わってくる。
エラトロッシュ医師は他競技のチームドクターを務めるなど、その活躍は野球界だけにとどまらないが、リー氏はチームに帯同して施術を行う“実務部隊”。本拠地が近いエンゼルスとドジャースは毎年フリーウェイシリーズが組まれているが、大谷は必ずと言っていいほどリー氏と試合前に談笑。その屈託のない笑顔には、どれだけ信頼を置き、かけがえのない人物かが伝わってくる。
ドジャースには肘手術から復活を目指す投手が多く在籍
今オフにFAになることについて、大谷が語ったのは今夏のオールスター前日会見が最後。「どうなんですかね。まだ全然わからないことだし、僕自身もなったことないですし。FA自体になったことがないので、自分ができることをしっかりまずはやること」と話していた。つまり大谷本人が新天地に希望していることなどは、はっきりしていない。それでも……。
大谷は来季開幕から打者に専念し、2025年シーズンの二刀流復活を目指す。そして、ドジャースには昨年8月に2度目のトミー・ジョン手術を受けた剛腕ウォーカー・ビューラーやダスティン・メイ、トミー・ゴンソリンら、肘の手術から復活を目指す投手がたくさんいる。やはり大谷翔平の新天地として、ドジャースは“全て”を兼ね備えているような気がしてならない。
○著者プロフィール
小谷真弥(こたに・まさや)1983年、大阪・大阪狭山市生まれ。埼玉・東松山市育ち。明大明治高、明大野球部を経て2006年報知新聞社に入社。地方部(富山・石川)を経て2009年に運動第一部(野球部)へ異動。2009年ロッテ、2010、11年横浜、2012年から巨人、2015年から日本ハム、2017年からメジャー担当。2019年2月からFull-Count編集部に所属。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)