オフには“日本満喫計画”「文化に触れたい」 ジーンズにこだわり…ヌートバーの素顔
月2回の「ペッパー通信」最終回…オフには“来日”も
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」に日系選手として初めて招集され、3大会ぶりの世界一に貢献したカージナルスのラーズ・ヌートバー外野手。Full-CountではMLB公式サイトのカージナルス番ジョン・デントン記者の取材をもとに、月2回の連載「ペッパー通信」をお届けしてきたが、最終回は、“日常”について。【取材:ジョン・デントン、構成:木崎英夫】
ラーズ・ヌートバーのメジャー3年目が終わった。
当コラムも幕引きとなるが、これまでとは趣向を変え、彼の日常を照らしたい。まずは、ファッションから。
実家はロサンゼルス郊外のエルセグンド。海に近いこともあり、気分転換にサーフィンを楽しむ。潮風を連れてくるようなカジュアル系が好みで、球場にも短パンとTシャツ、ビーチサンダルで来たいと言うが、「規則で無理」と苦笑する。
今春のことだった。南カルフォルニアで育まれた感性を刺激する日本ブランドとの出会いがあった。
3月の侍ジャパンで日本滞在中に、ストリート系の「KEBOZ(ケボズ)」から商品提供を受けた。「カッコいいし着やすい」。デザインと機能性にフィーリングがマッチ。大のお気に入りになった。
ヌートバーはジーンズに一家言を持つ。動物性の生地や素材を使用しないビーガンファッションの支持者であり、中でも「JW PEI」が必須アイテムだ。「濃いブルーも淡いブルーも好きだし、黒もなかなか」とバリエーションをそろえ、その日の気分で選んでいる。
そして、シューズ。これまで足元にはあまりこだわりがなかったが、「メジャーリーガーたちはシューズに凝る人が多い。僕も最近になって気にし出した」。一流選手たちに影響を受けたようで、ナイキの「Jordan Brand」を好んで履いている。
トップから足元まで、着こなしの世界を拡げたが、これも本拠地での話。シーズンの半分が遠征となるため、飛行機の移動にはドレスコードがありカジュアルとはいかない。敵地へのキーワードは「清潔感とシンプル」。ただ、ヌートバーに意識の変化が芽吹いている。
「どのチームにも実績を積んでたくさん稼ぐ選手が何人もいるから、僕の好みよりもちょっと派手というのが本当のところ。まぁ、僕はまだ稼ぎも少ないし、着こなせるほどのセンスを磨けていないからね。彼らの域には、ほど遠い。でも、ファッションは自己表現だということを認識するようになったかな」
最近はトヨタの車を購入「日本車以外は考えられない」
今は背伸びをしない。そして、話は食へと進む。
「お寿司と焼肉が大好き。この2つは僕の中で不動のツートップ。日本の肉は質がよくて、神戸ビーフは最高だ。日本では本当においしいお肉を頬張ったよ。で、忘れずに言うともう1つあって……。それは、ギョーザ!」
衣、食、とくれば次は住だが、独身の彼は車である。
「つい最近、トヨタのセコイアを買ったばかりなんだ。フルサイズSUVでゆったりしてるのがいい。兄のナイジェルはずっとレクサスに乗っている。故障しないし永久に走り続ける感じがする日本車以外は考えられない。実は、お母さんもずっとトヨタだったんだけど、マツダになったんだ(笑)」
アメリカに住む者として、日本車の性能と耐久性に異論はまったくない。
音楽について触れたのは6月だったが、本はどうか。ヌートバー曰く「好きな作家も愛読書もなし」。子供向けのフィクション作家で知られるダン・ガットマンを幼少期に愛読してからは「読書には興味がない」と言い切る。では、映像はどうか。
「映画もテレビもそんなに見ない。でも、最近になって『ゴッドファーザー』、『カジノ』、『パルプフィクション』などクラシカルな犯罪物を見るようになった。これからジャンルが広がっていくと思う」
WBCでの懸命なプレーで日本のファンを魅了したラーズ・ヌートバー。メジャー3年目の今季は、怪我に見舞われ3度の負傷者リスト入りを余儀なくされた。それでも打率(.261)、本塁打(14)、二塁打(23)、出塁率(.367)で自己ベストを記録。しかし、設定した数字にはどれも届かず「来季へやるべきことがわかったのが収穫」と総括した。
これまでにないトレーニングで精力的に取り組むオフには、待ちに待った日本行きが控えている。具体的な日程を明かさなかったのも「できるだけ日本の文化に触れる観光がしたい」が理由だ。
くつろぎの時間を作る待望の旅には、春の戦士たちとの再会がある――。
この連載で、読者のみなさんに等身大のヌートバーを受け止めていただけたのなら幸いである。
(「MLB公式サイト」ジョン・デントン / John Denton)